お立ち台での阪神助っ人の日本語の上達ぶりにビックリ!歴代の名言はオマリーのあの言葉
2020年のペナントレースが終わろうとしている。短縮したシーズンは意外と長く感じたのだが、今季の阪神で個人的に印象に残ったのは、外国人選手の日本語の上手さ。お立ち台での話だが、アナウンサーの質問にもびっくりしている。「日本語で」といきなりの無茶振りは、僕自身も何度も経験したことがあるが…。
時を戻そう。僕は1998年7月、初来日。沖縄県の伊江島に着いた、その翌日ぐらいだったかな。歓迎パーティを開いていただいて、まだ日本の文化に慣れていないころだった。お酒に関しての習慣やお箸のエチケットだけではなく、言葉の壁があって、ちょっと孤独感に陥ってしまった。しかも、飛び交っていた言葉は日本語の標準語ではなく、地元の方言だった。さらに、夜が遅くなればなるほど、(お酒のせいで)滑舌が濁ってしまい、ちんぷんかんぷんにしか聞こえなかった。
とその時に、宴会の司会者が「それでは、主役のトレバーさんにお話をいただきます。ミスタートレバー、プリーズ、ジャパニーズスピーチ!」と言われた時に頭が真っ白になった。「えっ?何を喋ったらいい?そもそも、英語ですらこういう場面で話したことがないのに、ニホンゴで???」と3分間ぐらい沈黙のまま立ちすくんでしまった。何を言ったか全く覚えていないけど、その経験自体があまりにも強烈的だったので、昨日のことのように覚えている。
阪神の助っ人たちはその比じゃないと思う。小さな宴会でスピーチを頼まれているのではなく、大きな満員の甲子園球場のファンを前に、そしてテレビで観戦している日本全国のトラファンの前で無茶振りされているのだ。なんでやねん?とツッコミたいところだろう、と推測している。遠い国から日本にやってきて、どれくらい日本に溶け込もうとしているかを知りたいファンのための演出?それなら、カタコトの日本語、一言で喜んでくれる人がほとんどだろうけど。
僕の記憶の中には「お立ち台」で発した歴代の助っ人たちの名言がある。まず阪神ファンになりたてたのころ、マット・マートン選手が大活躍中だった。「ノウミサン、アイシテル」という名言もあったけれど、ヒーローになるたびに、敬けんなクリスチャンであるマートンは「イエスキリストに平安がある」など、自分の信仰を伝えようとしているのは彼の性格をよく表していると思って聞いていた。
また、今から4年前にマット・ヘイグ選手が開幕戦2、3試合目、どちらもお立ち台に選ばれ、一生懸命日本語を喋ろうとしていたのを覚えている。「ゴンバテ」(頑張って)と「コンパイ」(乾杯)のつもりだったが、その発音ミスでファンを笑わせてくれた。かわいかった。
今年でいえば、ジョー・ガンケル投手が「タイガースファンズ、いつもありがとう」と自分の知っている日本語を振り絞って言い出したのに、共にお立ち台にいた岩崎投手が締めの言葉として、「タイガースファンズ、イツモアリガトウ」とガンケルの真似をしてファンを笑わした。岩崎投手はまた2週間後、同じセリフで締め括ったし、定番になるのかな?(笑)
日本語達者になりそうなのはジャスティン・ボーア選手。彼の口から発せれる「そうですね」や「いいお天気ですね」は流暢すぎる。日本プロ野球に残れば、来年はどれだけ日本語を話せるかは本当に楽しみだ。
2年目のジェフリー・マルテ選手も先日は頑張ってくれた。最後に発したのは、「タイガースファン、めっちゃ愛してる。応援、ありがとうございました」と長い文章を覚えたのはすごいと思う。
ただ、最近の外国人選手の「めっちゃ」の使い方はちょっとおかしいかもしれない(笑)。もうちょっと、自分だけのセリフでの締め言葉を考えるのがいいかもしれない。昔のトーマス・オマリー選手の「タイガースファンは一番や!」のように、決め台詞を覚えてくれたら、と思うのはちょっとぜいたくな願いかな。
◆トレバー・レイチュラ 1975年6月生まれ。カナダ・マニトバ州出身。関西の大学で英語講師を務める。1998年に初来日、沖縄に11年在住、北海道に1年在住した。兵庫には2011年から在住。阪神ファンが高じて、英語サイト「Hanshin Tigers English News」で阪神情報を配信中。