阪神、高校野球、甲子園…外国人のボクから見た「日本野球」の奥深さとは
待ち遠しかったプロ野球が開幕しました。でも考えてみたらオフは例年と比べて短かったんですね。阪神はまずまずのスタートを切ってくれたし、とにかく毎日のように試合があってありがたい。そして阪神ファンであるのと同時に高校野球ファンでもある私は「センバツ甲子園」の開催にも感謝しています。
昨年は新型コロナの影響で中止。当たり前のようにあったものがなくて寂しい思いをした。けれど今年は再び高校球児の戦いぶりに感動させられた。甲子園は日本の財産であり、象徴でもあると改めて感じました。甲子園と言えば…先日、高校野球をテーマにした素晴らしいドキュメンタリー映画に出合ったので紹介したいと思います。
監督を務めた山崎エマさんは、イギリス人の父と日本人の母との間に生まれた女性。神戸生まれの神戸育ちで、六甲アイランドにあるカナディアン・アカデミー出身です。高校卒業後に映画産業を勉強するために渡米。アメリカで生活するようになってから、イチロー選手に憧れるようになったといいます。ひたすら野球に没頭して世界的なスターになったイチロー選手。山崎さんも「何かにのめり込んで世界の舞台で輝きたい」という夢を抱いたそうです。
いくつかのドキュメンタリーで監督の経験を積むと、2018年に開催された「第100回の夏の甲子園」を舞台に、日本の文化を世界に伝えようと挑みました。タイトルは「甲子園:フィールド・オブ・ドリームス」(英題=Koshien:Japan's Field of Dreams)。神奈川の横浜隼人高校と岩手の花巻東高校の練習風景、球児たちの日々の努力、またそれぞれの県大会を美しく描写しています。
中心人物は両校の監督。両者の対照的な指導法に焦点を当てています。横浜隼人の水谷哲也監督は昔ながらの練習スタイルで、花巻東の佐々木洋監督は比較的に新しい考え方を導入し、球児たちの成長を見守るようなやり方です。エンゼルスで活躍する大谷翔平選手の恩師としても有名な佐々木監督ですが、実は横浜隼人で水谷監督の補佐していた時期があります。2人はいわゆる「師匠と弟子」の関係なのです。
ちなみに2018年は佐々木監督が夏の甲子園に出場し、古いスタイルを守った水谷監督は県大会1回戦で敗退。と言っても、山崎さんは日本の古い考え方が変わらなければならないと主張しているわけではありません。大谷選手の活躍に佐々木監督が関わったのと同様に、佐々木監督の成長には水谷監督の存在が不可欠でした。そして水谷監督の存在も、その前の世代の恩人のおかげ。革新的な素晴らしい偉人(大谷選手のような)や考え方を生み出すのは、脈々とつながる世代の積み重ね…いうことだそうです。
映画を通して、当たり前のようにある高校野球の奥深さに感動しました。改めて日本の文化、特に高校野球という財産に感謝しています。
◆トレバー・レイチュラ 1975年6月生まれ。カナダ・マニトバ州出身。関西の大学で英語講師を務める。1998年に初来日、沖縄に11年在住、北海道に1年在住した。兵庫には2011年から在住。阪神ファンが高じて、英語サイト「Hanshin Tigers English News」で阪神情報を配信中。