巨人FA加入→退団後は米独立リーグで「野球人生を再スタート」 糸井選手とは今も交流

 4年ぶりのカナダ帰省中に、うれしい出会いがありました。地元ウィニペグの野球チームは独立リーグのアメリカン・アソシエーションに所属しているんですが、たまたま滞在中に、米ウィスコンシン州を本拠地にしているレイクカントリー・ドックハウンズが遠征でやってきました。このチーム、実は2021年シーズンをもって巨人を退団した台湾出身の陽岱鋼選手が活躍中なのです。

 僕はドックハウンズにメールして「陽岱鋼選手を取材して日本のファンに近況を伝えたい!」とアピールしました。すると翌日、チームの広報さんからOKが出て、試合前に会うことができたのです。

 当日、彼に会った印象はやっぱり超カッコイイ!台湾のスーパースターのオーラは今も健在です。広報さんはアメリカ人なので3人で会話を交わした際は英語。この時の彼はちょっと緊張気味であんまり話が進まなかったけれど、僕が日本語に切り替えた途端に笑顔を見せてくれて、そこから本当に楽しく会話をすることができました。

 高校生ドラフト1巡目で日本ハムに入団、その後は巨人にFA移籍するなど、エリート街道を歩いてきた陽岱鋼選手。そんな彼は今、環境的に恵まれているとは言い難いアメリカの独立リーグで「野球人生を再スタートしているような気持ちだ」といいます。

 中でも印象的なのは、長時間のバス移動だそうです。今回のロードは本拠地からウィニペグまでなんと13時間。睡眠はちゃんと取れないし、腰痛にもなりやすい。またロード中の朝食はホテルでは用意されておらず、自分たちで手配する必要があり、チームメイトとレストランを探して共に食事する喜びがあるとか。また今季は2度ほど「投手」としての出場も経験したそうです。

 しかもこのリーグ、NPBと違ってファンとの距離感がほとんどない様子。ある日、彼がネクストバッターズサークルで準備していると、ネット裏に子供たちが寄ってきて「グローブをちょうだい!」とお願いしてきたそうです。打席後、グローブにサインしてプレゼントすると、もちろん子供たちは大喜び。日本では考えられない試合中のファンサービスについても「経験できてよかった」と話してくれました。

 阪神ファンの筆者としては、彼の元チームメイト(日本ハム時代ですが)である糸井嘉男選手とのことも聞かずにいられません。すると…「この前、糸井さんが使っているアンダーアーマーのバットをSNSで見て“いいね!”したら、チームメイトからもバットを集めて、いっぱい送ってくれたんです。こっちのチームメイトに見せたら一瞬でなくなりましたよ。その日は、もらったバットを使って、僕の1本を含めてチームで5本塁打が飛び出しました」と。今でも交流があることをうれしそうに教えてくれました。

 台湾から野球留学で日本にやって来て、今はアメリカでプレーしている陽岱鋼選手。現役引退後は、経験してきたことの全てを生かして「野球界に恩返しがしたい」という強い思いがあるそうです。宿敵巨人のOBとはいえ、そんなナイスガイを応援せずにはいられません。これからも頑張れ!陽岱鋼選手!

 ◆トレバー・レイチュラ 1975年6月生まれ。カナダ・マニトバ州出身。関西の大学で英語講師を務める。1998年に初来日、沖縄に11年在住、北海道に1年在住した。兵庫には2011年から在住。阪神ファンが高じて、英語サイト「Hanshin Tigers English News」で阪神情報を配信中。

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