プロ野球の「通訳」という仕事 トレンドはスペイン語?必要不可欠なスキルは?カナダ出身阪神ファンの見解
阪神タイガースは昨季王者としてシーズンをスタートした。滑り出しはイマイチだけど、1年は長いから「一喜一憂はしないように」と自分に言い聞かせている。一方で筆者は「阪神しか知らない人間」から卒業しようとしている。日本一を機に、阪神一筋から野球におけるいろんな職業に興味が湧いたから。中でも興味深いのが「通訳」という仕事だ。
私の本職は英語講師。そんな筆者から見て、野球における国際コミュニケーションは不思議でならない。では実際にどんな仕事をするのか?必要な資格、性格、能力について考えてみようと思う。
もちろん最重要なのは言語能力。日本語と英語は当然、元DeNA監督ラミレス氏の専用通訳だった丸山剛史氏によると、最近はスペイン語がかなり重要になってきているという。ドミニカ共和国など、中米出身の若手選手を獲得する球団が増えているからだと。MLB未経験のまま来日するパターンが増えており、英語を理解できない選手も増加。そのため丸山氏いわく、スペイン語の習得は球団通訳として採用される〝近道〟だという。
つい最近も阪神タイガースにそういう選手が2人入団した。ドミニカ出身のベタンセス投手とマルティネス投手。ともに24歳の育成選手で、その通訳を担当するのは〝新戦力〟の伊藤ヴィットル氏。彼はブラジル出身で社会人野球の日本生命でのプレー経験もあり、大きな役割を果たすでしょう。
語学力だけでなく、野球の知識、願わくはプレー経験が理想だ。例の件で解雇された水原一平氏も、在任中は大谷選手の練習を献身的にサポートしていた。コーチの言葉やニュアンスを正確に選手に伝え、細かい動作、筋肉の動きや違和感、野球用語などを2カ国語以上で駆使しないといけない。バイリンガルなら誰でも野球選手の通訳になれるとは思えない。本当に稀少な存在だ。
コミュニケーション能力の高さも重要で、何よりも異文化への理解や寛容はマストだ。プロ野球の通訳は担当選手の文化や風習を頭に入れないといけない。その選手の〝当たり前〟を理解しながら、日本での〝当たり前〟を丁寧に教える必要があるから。しかし同時に選手を型に嵌めないように気をつけないといけない。個性を無視してストレスをためるとプレーにも悪影響が及ぶ。
筆者も実感しているが、海外での生活には様々なハードルがある。通訳という仕事は、そのハードルを下げて選手が野球に集中できるようにしないといけない。選手の成功、幸福が全てかかっていると言っても過言ではない。最近はそんな視点からもプロ野球を見て、「阪神しか知らない人間」からの卒業を目論んでいます。
◆トレバー・レイチュラ 1975年6月生まれ。カナダ・マニトバ州出身。関西の大学で英語講師を務める。1998年に初来日、沖縄に11年在住、北海道に1年在住した。兵庫には2011年から在住。阪神ファンが高じて、英語サイト「Hanshin Tigers English News」で阪神情報を配信中。