「何が起きてるんだ!」ピンチで味方投手に拍手 阪神ファンの筆者らが驚いたオリックスファンの応援
阪神にとって4月はいろんな意味で湿った1カ月だった。打線は本調子に遠く、雨中のプレー強行も何試合かあった。冷たい4月の雨の中、よく辛抱してくれた選手たちに労いの言葉を送りたい。
筆者は先日、雨の心配がない京セラドームでオリックスの試合を観戦してきた。新しい職場の同僚で、アメリカとカナダの両国籍を持つカイルを誘って。カイルは野球好きだが、そこまで詳しくない。そんな彼は観戦中にいろんな疑問が湧いた様子で、一緒に過ごした3時間は筆者にとっても非常に新鮮だった。何よりも彼の言葉や周りの風景で〝もう一つの関西カルチャー〟に触れた気がした。
甲子園での阪神戦に慣れている筆者は、満員の球場が当たり前だと思っていた。カイルも3連覇しているオリックスの試合は満員だろうと予想していた。ところが当日は割と空いている席が多かった。不思議がる彼に、筆者の持論を説明してみた。
「関西の野球ファンで阪神派とオリックス派はハッキリしている。贔屓を成績によって変えることはまずない。加えて、これから野球ファンになろうとする人たちは友人知人に影響されやすい。ファン人口の多い阪神はその面において有利だし、地上波テレビでいつでも見られる球団に惹かれて当たり前。オリックスファンが大幅に増えるのは容易なことではない」と。
ファンの数は阪神の方が圧倒的に多い。では派手さは?甲子園には頭のてっぺんから足先まで〝虎〟になっている人を結構見かける。でもこの日の京セラドームで、そのようなオリックスファンは見つからなかった。そして「応援スタイル」の違いに、日本プロ野球に慣れている筆者も初心者のカイルも非常に驚いた。
この試合、オリックス3点リードで最終回に突入。ところが守護神の平野佳寿投手は先頭打者にホームランを浴びると瞬く間に同点に追いつかれた。その後も勝ち越し走者の出塁を許し、打者へのカウントは3ボールに。その瞬間、スタンドから湧き上がったのはヤジでもため息でもなく、拍手だった。
「何が起きてるんだ!」とカイルが尋ねてきた。咄嗟に答えは出なかった。オリックスファンは苦しんでいるピッチャーを拍手で後押ししようとしていた。少なくとも筆者は甲子園で目撃したことがない光景だった。
今まで、阪神ファンの応援スタイルは〝関西文化の縮図〟だと思い込んでいた。元気モリモリでツッコミが飛び交うスタンドは「大阪そのもの」だと。でもオリックスの試合を観戦して、みんながみんなそういうタイプではないなぁと目から鱗だった。
近いうちにもう一度カイルと一緒に野球観戦に行こうと考えている。今度は甲子園に連れて行き、立派な阪神ファンにしてやろうと。けど、やっぱりカイルはカイル。もしオリックスの応援スタイルがマッチするのであればそれはそれで構わないかな。うーん、でも阪神ファンの同士を増やしたいなぁ。
◆トレバー・レイチュラ 1975年6月生まれ。カナダ・マニトバ州出身。関西の大学で英語講師を務める。1998年に初来日、沖縄に11年在住、北海道に1年在住した。兵庫には2011年から在住。阪神ファンが高じて、英語サイト「Hanshin Tigers English News」で阪神情報を配信中。