黙って、藤浪を信じてみよう
【3月23日】
ごちゃごちゃ言わなくていい。
藤浪晋太郎は大丈夫だ。
僕が野球評論家ならそう書く。当コラムのライターとしてもズバッとそう書きたいところだけど、ちょっとエラそうなので、取材に沿って、同じ意味のことをなるべく冷静に書いてみようと思う。
朝から鳴尾浜のタイガーデンへ行ってきた。目的はひとつ。ウエスタン・リーグ中日戦に登板する背番号19を見るためだ。開幕ローテーション入りがかかるマウンド…ということもあって、報道陣の数は普段のファーム取材の2倍、いや3倍はいたかもしれない。スタンドは超満員だったし、何よりいつもと大きく様相が違ったのは次々に現場&フロントの首脳が押し寄せたこと。ヘッドコーチ片岡篤史をはじめ、投手コーチ香田勲男、金村暁、バッテリーコーチ山田勝彦、プレーボール間近になって金本知憲、球団顧問の南信男、そしてオーナー坂井信也までやって来たので、カメラマンはせわしなく、「ザ・阪神取材」感がハンパない鳴尾の昼さがりだった。
さて、6回2安打1失点(自責0)の中身は番記者の原稿をご覧いただくとして、僕は〈藤浪復活〉の可能性に触れたいと思う。
シーズンは長丁場。改めてだけど、これを大前提に考える。超一流だって、波はある。シーズンに入り、藤浪が仮に1試合、いや2試合連続で結果が出ないとする。そこで「やっぱりダメか」と周囲が短絡的に道を塞ごうとせず、「次はいける」と手をたたく。札幌ドームの日本ハムファンが3ボールになった投手に拍手をおくる…あの感じ。あんな感じで今年は藤浪を励まし、信じてみる。
3勝に終わった昨年を経て、技術を再建した今春のキャンプ、これまでの実戦…。僕なりにしっかり藤浪を見てきた(つもりだ)。フォームもだけど、まずメンタルが見違えるようになった。今年は大丈夫…僕はそう言い切りたい。
前回13日のヤクルト戦も結果は良くなかったけど、味方の連続失策で崩れた側面もあるわけで、あの1試合だけで重箱の隅をつつく必要なんてない。あれから中9日で迎えたテスト登板。自らのミスもあったが、藤浪は「初回からボールは良かった」と話した。もちろん「キャリアベスト」であるはずはない。でも、一段、また一段とステップを踏むプロセスとしては納得できるボール…そういう意味で「良かった」のだと思う。
会見の後、2軍監督の矢野燿大に藤浪を評価してもらった。
「晋太郎の本来のポテンシャルからすれば、まだまだなのかもしれない。でも、一旦悪くなったところからの段階、今の段階としては『良し』と。あまり悪いところばかり言い出したらな…。去年の悪いときから比べれば、ひとつひとつのプレーを見ても気持ちが前に向き出していると思うから…」
矢野は何か言葉を飲み込んだ気がしたけれど、僕なりに解釈すると…「俺らがあまり言い過ぎるのは良くない」-。しばらく黙って信じてみよう。放っておけば、藤浪はやる。=敬称略=