19年の開幕投手について
【2月3日】
19年の阪神開幕投手は背番号19がいい。昨秋、当欄でそう書かせてもらった。あの時点で藤浪晋太郎がそれにふさわしい数字を残していたわけではないし、僕が取材する限り、そもそも本人がそこに執心しているわけでもない。
私的な願望だけれど、低迷する阪神が新時代へ駆け出すためにはやはりフレッシュで洋々たる担い手がほしい。では、誰がその大役を背負えば、矢野燿大が命題に掲げる「ファンを喜ばせること」が叶うのか。もちろん、ランディ・メッセンジャーの5年連続開幕投手だって阪神ファンは喜ぶに違いない。でも、どうだろう。遠慮なく僕の感情を吐き出せば、もっと「ファンを喜ばせる」選択が必ずあるような気がする。
「風さん、藤浪の初日のブルペン見られました?平均(球速)150キロ出ていました。本人と少し話したんですけど、状態がいい根拠をしっかり持ってましたよ」。
宜野座ドームの脇で阪神編成ディレクターの永吉和也が嬉しそうに教えてくれた。永吉の職務は肩書の通り、アマ球界の素材探しである。昨年10月のドラフト会議でも、球団幹部や矢野とともに阪神チームの円卓に座っていた人だけど、頭の中は年中スカウティングで満タンだ。そんな彼に「晋太郎のような素材って、やっぱりなかなかいない?」なんて愚問をぶつけてみると、「いません」と即答された。確かに、あのプラチナ素材がそこらじゅうに転がっていれば、永吉も苦労しない。
2月1日から藤浪に注目している。この日はブルペンに入らなかったが、キャンプ初日から2日間の投球を1球逃さず見させてもらった。球筋や球速、技術の進化は専門家に委ねるとして、まずもって僕の目には、昨年、一昨年とは別人の顔つきに映っている。
昨秋の安芸キャンプ中、藤浪とゆっくり話す機会があった。「福原さんの存在は大きいです」。24歳ははっきりそう話していた。2軍からの配置転換で新投手コーチに就任した福原忍は「気持ちの持ちよう」を説く指導者だそうで、そのスタイルがうまくハマっているのかもしれない。
①「ストライク先行。カウントを悪くするな」②「フォアボールをいくつ出したって、ゼロで帰ってくればいいんだよ」。もちろん①が大正論なんだけど、僕の知る福原というコーチは、藤浪に対して②のニュアンスで伝えるのだ。
藤浪20勝いける!スポーツ紙にそんな見出しが躍っていたことを福原に伝えると、「晋太郎が普通にやればいけますから」と笑う。その「普通に…」を困難にさせる何かを取り除いてやれば、メンタルのみならず、技術も勝ち運もついてくる…ということか。
20勝を挙げるなら、ノー文句で開幕投手。その条件は藤浪が1年間「普通」であること。そんじょそこらの素材なら、皆ああだこうだ言わない。向こう10~15年を託したくなる雄々しい大木がここに植わっている。19年の開幕は19番がいい。実現すれば、我が阪神に爽やかな春を感じる。=敬称略=