斎藤佑樹に会ってきた

 【2月17日】

 藤浪晋太郎とサシで向き合うとき、よく甲子園の話をする。彼が高校時代の感情をどんなふうに留めているのか分からないので、もしかしたら無意識に愚問をぶつけてしまっているかもしれない。

 今さらだけど、春、夏の甲子園で日本の頂点に立った男である。競技人口の下降が危惧される野球だけど、とはいえ、今も昔も世間の注目度は、国立(今は埼スタ)とも花園ともやはり異なる。だから世間は追い掛ける。甲子園王者の歩む未来そして、成長を。

 甲子園の英雄…。華々しさでいえば、この人は藤浪以上かもしれない。面識も接点も全くないけれど、ずっと話を聞いてみたかったので、宜野座から名護までレンタカーを走らせて会ってきた。

 「はじめまして。斎藤です」

 そう、斎藤佑樹である。

 彼のブルペンを初めて見た。捕球→投球の間隔は6秒ほど。捕っては投げ、捕っては投げ。好調時の調整法は早大時代から変わらないそうだ。練習後、チーム宿舎まで歩きながら、甲子園の話、そして甲子園優勝投手の話をさせてもらった。僕が通り一遍に「阪神タイガースの藤浪投手は今もがきながら…」と切り出すと、斎藤は少し考えを巡らせながら答えた。

 「僕があまりニュースを見ないからかもしれないですけど、(藤浪が)『もがいている』というイメージはあまりないですね。すみません、すごく言い方は悪いかもしれないですけど、マスコミが煽(あお)って『もがいている…』というふうに(世間に)見させようとしている感じにみえるんですよ。実際に(藤浪の)映像を見ると、やっぱり一流のプロ野球選手だと感じますし、そこまでもがいているとは僕は感じないです」

 藤浪はもがき苦しんでいる。我々は度々そんなふうに伝える。新人から3年連続2ケタ勝利…からの、この3シーズン。世間の目には〈もがいている〉ように映るだろうし、そう書くのが適当では?でも、斎藤の言う通りで確かに藤浪本人に「もがいている?」と聞いたこともなければ、藤浪が報道陣に「今、僕はもがいています」と語ったことも一度もない。

 聖地のV腕を一括り(くくり)にするつもりはないけれど、斎藤に「斎藤投手に続いた甲子園の優勝投手は気になりますか?」と問い掛けると、「やっぱり、気になりますね…」と返ってきた。

 優勝投手がもがき苦しめばドラマチック…そんな虚像を僕も含めこちら側の人間が求める度、仕立てられる側は違和感を覚えるのかも…。斎藤と話していて、そう感じる。甲子園の英雄は騒がれて大変?僕らは時にそう印象づける。でも、当人の感覚はどうなのか。

 「それ(世代最高の投球)が当たり前のようにできたから(藤浪は)ここまでこられたわけで…。(藤浪と自分が)一緒の考えか分からないですけど、同じ感覚はあるんじゃないかな…と思います。僕は自分の人生がすごく大変だとは思ったことはないですし…」。

 斎藤や藤浪に「物語」をつけるのは、もうよそう。=敬称略=

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