一度だけ、あるかな…
【2月3日】
読谷村(よみたんそん)へ行ってきた。沖縄本島中部のこの村に阪神のチーム宿舎がある。ただ、今回の用はそっちじゃない。吉田の趣味やん!とツッコまれそうだけど、否定するつもりもない。
お目当てはサッカーJ1ヴィッセル神戸の沖縄キャンプである。昨年は宜野座のお隣、金武町(きんちょう)で開催されたのだが、今年のベースは残波岬ボールパーク。アンドレス・イニエスタがすぐそこにいるのに、見ない手はない!といっても滞在時間は30分。キャンプ打ち上げ日の調整を眺めて、宜野座へ戻った次第デス。
いやぁ、神戸に本社を置く新聞社の自称サッカーフリークとしては、おらが村のチームでスペインの至宝がプレーする幸せといったら、例えようがない。キャプテンイニエスタが読谷で発した言葉がまた神戸っ子を泣かせるのだ。
「タイトルを全部取ることは難しいと分かっているんだけど、J1を含め、取れるタイトルは全て勝ち取りたいんだ」
天皇杯覇者が優勝(カップ戦を含む5冠)宣言である。
「あれ?風ちゃん、来てた?」
こちら宜野座で僕を風来坊呼ばわり(?)するのは阪急交通社大阪団体支店長の松岡佳代。彼女とは長い付き合いになるのだけど、その名を知らない阪神の球団関係者はいない!というほど、それはもう長いことタイガースと深い関わりを持つ女性(ひと)だ。
「6月にハワイへ行くことにしたの。目的?優勝旅行の下見よ」
03、05年とも主催社の担当として阪神の優勝旅行に携わった松岡は涼しい顔でそう言うのだ。オンナの勘?いや、自腹の下見へ駆られるほどの〈確信〉は、こんなやりとりが裏付けになったという。
松岡「カントク、今年はハワイですね。優勝お願いします」
矢野「うん。するで」
02年、松岡が企画した阪神の第1回キャンプ見学ツアー、その参加者はたった12人だったそうだ。それが今では毎年500人を優に超え、申し込み受付を開始すれば即日キャンセル待ち。今回は例のウイルスショックで若干キャンセルが出たものの、盛況だとか。
「私はこの仕事をしたくて就職したの。キャンプツアーは最初12人。絶対成功すると自分の中で言い続けて…。夢が叶ったのよね」
宜野座のスタンドには〈松岡ツアー〉を堪能する虎党、虎党…。
言霊=言葉に宿る不思議な力である。「全て勝ちたい」と宣言したイニエスタよりも更に強く「優勝します」「優勝するで」と言い切る矢野の言葉に「力」が宿る。
では、矢野のこれまでの人生で有言実行できたものはあるのか。キャンプ3日目の昼下がり。気になったので、本人に聞いてみた。
「う~ん、どうやろな…。俺ってさ、その時々で頑張って、頑張って、(夢、目標に)近づいていくタイプやったからな。あぁ、でも一度だけあるかな…」
この後続けた矢野の言葉に、実は感動した。だから、まだ大切にしまっておく。「優勝」へ発つ3月20日に書こうかな。=敬称略=