「本質」しか喋らない
【2月22日】
石垣島から那覇へ戻る全日空の機内でこれを書いている。毎年勝手に恒例にしているロッテキャンプの取材だけど、いつも実りが多い。目的は佐々木朗希の逸話集めではない。今年もあの人を…。
「毎年、すみません。わざわざ島まで来ていただいて…」。千葉ロッテ2軍監督・今岡真訪(まこと)である。ロッテが井口-今岡体制になって3年目。二人の連係は日を重ねるごとに強固になっている。個人的にこっちの興味も尽きないけれど、やはり、デイリー読者にとって今岡といえばいつまでも、2度の阪神Vの立役者…。
僕が石垣島まで話を聞きに行くのは、簡単にいえば、〈プロ野球業〉に対する今岡の哲学が好きだから。どんな考え方か。これはもう一言では表せない。今回、何時間も彼と話した中で、虎党に馴染み深いものに触れてみたい。
さとうきびがざわわと風にゆれる。透き通る青空が頭上に広がる南ぬ島(ぱいぬしま)で、こんがり日焼けした今岡に聞いてみた。
阪神をVへけん引した今岡という天才打者を作り上げたのは誰? 「誰といいますか…。『この人を胴上げしたい』というもの(自分の気持ち)ですよね。分かりやすい言葉でいうと、『そういう誰かをつくること』。僕には『そういう人』がいましたから。ツキがあるんですよね。ぶつぶつ文句を言いながらやる野球と、絶対この人のために…と思ってやる野球と全然違うじゃないですか」
なるほど。例えば、05年の147打点という無類の勝負強さ。あれも、そういう気持ちが原動力になっていた…ということなのか。
「星野さん、岡田さん、二人とも本質を曲げない人でした、選手の長所、短所を含めた本質です。岡田さんは、僕が駆け出しの頃の2軍監督でしょ、例えば、僕がバント失敗して2軍に落ちるじゃないですか。岡田さんは『バント練習して来いって言われたやろ。そんなん、お前はなんぼバント練習してもメシ食えへんで』って真顔で言うんです。岡田さんは誰かに対して文句を言っているとかじゃなくいつも本質を言う。僕はそれを分かっていたので…。岡田さんが1軍監督になる時、僕は『選手会長やります』って手を挙げました。この人を胴上げするまで選手会長やって次は赤星に渡そうと」
へぇ…そうだったのか。
「僕、守備が下手でしたけど、『特守せぇ』って一回も言われたことがない。それが正解とかじゃなく、岡田さんは本質を曲げて喋らなかったということです。お前守備はええから打て!という。星野さん、島野さんもそうでした。練習の場で、こうせい、ああせいと言われたことがなかった」
石垣島から那覇へ戻り、中日戦の結果を見てみる。ほう、高山俊が4安打か。ほかは、どうか。
「今の僕は実は岡田2軍監督のスタイルを多々真似ています。選手をジーッと観察し、何も言わない。本質しか喋らない」。選手、個々の本質を見抜く。ここで言う(書く)は易しだけど…。今岡の哲学は興味深かった。=敬称略=