何か面白い投手を…
【8月27日】
金本知憲が母校の指導者に?今週、そんな臆測が飛ぶ(?)ニュースが各メディアで流れた。大野豊、権藤博らとともに、学生野球の指導資格を回復するための研修を受講した金本の思いとは…。
「ちょっと調べてくれんか?」
金本からそんな連絡があったのは昨秋のこと。指導資格回復について詳しく聞きたいというので、知りうる限りを伝えた。今回は野球殿堂入り顕彰者を対象とした特例研修だったわけだが、金本はあらゆる可能性を視野に、現役時代から興味を隠さなかったアマチュア指導への見識を広めたのだ。
「アマチュアの可能性をもっと引き出せる機会を持ちたいと考えておりました。今後、アマチュアとの接触機会を増やしていきたいと思っています」
そんなコメントを発信していたけれど、言葉通りだと思う。
「阪神の監督?アホ、やるわけないやろ。指導者?それは興味ある。高校?いや、大学かな。どんな形か分からないけど、教えてみたい気持ちはあるけどな」
これ、引退後の金本と僕の会話である。アマチュア選手のポテンシャルを見出し、教え、プロ野球へ送り出したい…そんな〈第二の人生〉もいいなと、金本はおぼろげに考えていたのかもしれない。
「俺は、野手よりも、ピッチャーを見る目のほうがあるのかも」
監督時代の金本から、そんな話を聞いたことがある。
この夜6勝目を挙げた青柳晃洋を見ていて、ふと思い出した。
あれは15年の秋。「金本監督」にとって初めてのドラフト会議でのこと(1位・高山俊のドラフトである)。就任会見を終えたばかりの金本は、4巡目で望月惇志を指名した後、当時の統括スカウト佐野仙好に投げかけ、5位指名を巡ってこんなやり取りがあった。
金本「それほど球の速くないまとまった投手よりも、何か面白い投手はいないですか?」
佐野「それなら、帝京大の青柳は面白いですよ」
金本「変則で球が速いのは魅力ですね。青柳でいきましょう」
阪神は歴史的に、フォームの綺麗な、まとまった投手を好んで指名してきた…俺が打席に立てばどんな投手が嫌か。そんな視点でリストを見渡したとき、佐野が薦める変則右腕が光ってみえた。
「あれは、佐野さんのファインプレーだよ」
青柳がチームの勝率を5割に戻した夜、金本はそう懐かしむ。
2点を先制された初回、なお2死一、二塁のピンチで青柳は二塁へここしかない絶妙な牽制球を投げた。かねて「送球が苦手」と話してきた変則右腕が上から投じた見事な連係プレーである。あの好守がなければ…ゲームの流れを変える分岐だったように思う。
「牽制が下手。クイックが苦手…そんな欠点を嫌って(ドラフトで)指名を回避するのは、『我々は欠点を直せません』と指導を放棄しているようなもの。俺は素材重視でいこうと決めていたよ」
青柳、プロ2度目の牽制刺…前監督は頷いている。=敬称略=