「この道」を論じよう

 【11月28日】

 「フィジカルが一定のレベルを超えると技術では抑えきれなくなります」-。ダルビッシュ有のこのツイートについて前回書いた。彼は今年の日本シリーズを観て感じたこと、持論を呟いていた。

 ソフトバンクが巨人を返り討ちにした、あまりにも一方的な頂上決戦をどう見るか。2年連続のスイープ決着は長年セのチームを担当し、原巨人の強さを知る者にとっては、ショッキングだった。

 歯が立たない。そう表現しても過言ではない両軍の差は何か。評論家諸氏が様々な視点で語っておられる中、ダルビッシュの言葉が当方の心の琴線に触れた。

 「ソフトバンクはチームでこの道と似た道を通っています」

 ダルビッシュの語る〈この道〉

とは、計画的なウエートトレーニングによるフィジカルの強化である。ソフトバンクの〈この道〉は球界で有名であり、監督・工藤公康がその先頭に立っていると耳にする。そのソフトバンクに今シーズン唯一勝ち越したロッテも現在進行形で〈この道〉をゆくことを2軍監督の今岡真訪が教えてくれたことも前回の当欄で書いた。

 ソフトバンクは計画的に〈この道〉をチームとして貫き、その成果が出たのが昨年と今年のシリーズ-これがダルビッシュの見解であろう。そして、もし来年ロッテがフィジカルの強さを発揮し優勝すれば、ダルビッシュは同じようにツイートするかもしれない。

 では、仮に阪神が今シリーズに出場し、ソフトバンクと戦っていたらどうだったか。ダルビッシュの見解に照らすなら、阪神も〈この道〉をゆかなければ、王者のフィジカルに太刀打ちできない。

 〈この道〉をゆこうと試みた阪神監督・金本知憲は3シーズンで退任した。では、金本がチームに導入したウエートトレ計画の成果は3シーズンで出たのか。

 こんな話がある。

 ソフトバンク千賀滉大、武田翔太が出場した17年WBCのエピーソードである。登板前日にめいっぱいウエートトレーニングする彼らの姿を見た侍ジャパンのスタッフが心配して声を掛けた。

 スタッフ「明日、投げるんだよな。そんなにガンガンやって大丈夫か?」

 すると、両者は何食わぬ顔でこんな返事をしたという。

 「いつもやっているメニューなんで、大丈夫ですよ」

 彼らはソフトバンクで課されるルーティンを世界大会の最中も淡々とこなしていたそうだ。

 一朝一夕で結果を求めるものではなく、中長期プランでチーム全体としてフィジカルを強化する。金本が追求した〈道〉である。

 金本に聞いたことがある。

 現役時代の金本がウエートトレーニングの成果を実感し始めたのは何年目くらいなのか。

 「実感は、やり始めて3年目くらいかな。最終的に、肉体(からだ)がマックスで出来上がったなと感じたのは、8年目くらい。一番足が速くなったと感じたのは、一番体重が重いときだったよ」

 この続きは次回。=敬称略=

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