「ニューハーフ」で勝った
【2月17日】
その看板が目に入った瞬間、思わずブレーキを踏んだ。レンタカーを路肩に寄せ、もう一度見てみる。ピンク地に白ヌキで…。
「名物 ニューハーフ」
こんな長閑な県道に??
隣の看板は我那覇そばにマンゴー、パインの産地直送…そもそもここは道の駅。そっち系のお店はどうしたって似つかわしくない。
でも待てよ。メジャー取材で米国へ行ったとき所々こういうのあったぞ。ドライブインで夜だけオープンするその手のお店か?
「ハハハ…。みなさん期待して来てくれますよ。でも、笑って帰るさ。観光客は通りすがりに看板見て帰りしなに寄ってくれる。やっぱり、気になるみたいよ」
「ニューハーフ」の名付け親、玉置のおばちゃん(地元の人にそう呼ばれる)は笑う。
ってことは…僕もまんまとお宅の「戦略」に引っ掛かった?
「美味しいから食べてってよ」
日本ハムの取材で車を走らせ、沖縄名護で見つけた「羽地(はねじ)の駅」。県の養鶏発祥地の名産、羽地鶏は僕も聞いたことがあったけれど、まさかこんなネーミングで看板になっているとは…。
「羽地鶏のミンチと魚のすり身を半分づつ混ぜて作ってね。何て名前つけたらいいかなって思案して…。半分半分で作った新商品だから『ニューハーフ』でいいんじゃない?って、私の遊び心。最初は上役が皆「非常識だ」って反対したよ。でも、大ヒットしたら誰も文句言わなくなっちゃった」
1本150円の名物「ニューハーフ」…食してみると、これが確かに、旨(うま)い。
「認めさせたら勝ちよ(笑)」
そんなおばちゃんの強気を引っ提げたまま、宜野座で矢野燿大を追った第4クール2日目。規制のなかったこれまでなら、3年目を迎えた指揮官にじっくり聞きたかったことがある。
初心、そして、信念は変わっていないか、と…。
選手の自主性に委ねることも、どうせやるなら笑顔でやり抜くことも、もちろん矢野ガッツも…。
様々な媒体でその精神を貫く旨を見聞きするので矢野の心持ちはブレていないはず…。正直書けばこれら矢野流へのネガティブな声も耳に入ってくる。それでも、かねて当欄で綴ってきたように僕の「直球」を綴ると、変わらず、矢野さん、貫いてくれ-である。
既成に反することも、勝ちゃ、アンチは黙るのだから。
宜野座のスタンドで野球評論家権藤博と束の間、立ち話をさせてもらった。日経新聞のコラムをいつも楽しみに拝読している。そんなことを伝えながら、「プロ野球論」について少しだけ…。
「野球は監督なんだよ」
権藤はそう言う。つまり、阪神は矢野次第ということ。そう言われれば、僕は勝手に思う。今年こそ勝ちきって「矢野流」を皆に認めさせてやろうじゃないか。
ちなみに、82歳になる権藤、なんと昨季のセ・リーグ順位予想をパーフェクトで的中させた。見る目は確かである。=敬称略=