3月生まれの鬼才たち
【3月13日】
佐藤輝明が生まれた1999年3月13日…あの日、阪神は日本ハムと戦っていた。一塁ベンチでノムさんが笑っている。二回に18イニングぶりに得点し、野村阪神が甲子園初勝利を挙げた日である。
22年前のきょう、野村克也は初めて開幕オーダーについて言及した。1番・坪井、2番・和田、3番・平塚、4番・ブロワーズ、5番・ジョンソン、6番・今岡、7番・浜中…が、開幕戦を託す捕手だけまだ決めかねていた。
三顧の礼で迎えられた名将の苦悩はあの日から始まったのだ。
懐かしい本紙をめくると、僕が同試合を取材していたことを思い出す。あの年、開幕捕手に指名された矢野輝弘(燿大)がいま、当時のノムさんと同じように甲子園の一塁ベンチに腰掛けている。その光景を何だか不思議なものに感じながら、PCのキーをたたく。
矢野がとっくに開幕構想に入れる佐藤がこの日、22歳の誕生日を迎えた。記念日に無安打…それも大きな話題になるのがスターの証し。ノムさんが生きていれば、この大物をどう評するだろうか。
阪神の3月生まれといえば、原口文仁や江越大賀、板山祐太郎、R・スアレスがそうだけど、ずばり佐藤と同じ13日生まれといえばR・バースである。1試合打てなくたって、皆でハッピー「バースデー」を祝いたくなる日だ。
ちなみに、3・13に生を受けた各界の著名人を探せば、吉永小百合、小渕健太郎(コブクロ)、今田耕司、戸田菜穂、中島健人(Sexy Zone)…世代広く名の知れた面々が並ぶ。
球界では、阿部慎之助、菊池涼介、平田良介ら3月誕生のスターがいるけれど、調べてみると、日本のプロ野球は3月生まれが最も少なく、4月生まれの半数ほどしかいない。だから、3月生まれの僕は「がんばれ!テル!」と肩入れもするのだけど、そもそも、3月に誕生した者は概して才能を開花させにくいのか。いや…。
例えばサッカー界では、香川真司や内田篤人、川島英嗣、酒井高徳ら近年の日本代表、錚々たるメンツが3月生まれだし、なでしこ丸山桂里奈もそうだ。例えば格闘の世界では、魔裟斗、山本KID徳郁、井岡一翔に、白鵬…。
そして、武豊も弥生(やよい)生まれのキングである。
芸能音楽の分野では、あいみょん、米津玄師、桜井和寿、西野カナ、松田聖子、それに綾瀬はるか…もうこの際だから海外のスーパースターも記しておくと、マライア・キャリー、レディー・ガガ、セリーヌ・ディオンにジャスティン・ビーバー…挙げればキリがないほど、才能の宝庫である。
3月生まれの世界的スターといえば、アイルトン・セナもそう。「音速の貴公子」が他界したのは94年だから、佐藤が生まれる5年前。古い雑誌でセナが「この世に生を受けたこと、それ自体が最大のチャンスではないか」と語っていたけれど…西宮生まれの佐藤が「最大のチャンス」を故郷で活かそうとする、その姿を尊く感じた3・13である。=敬称略=