由伸をまねる子たち
【11月23日】
オリックス山本由伸が沢村賞に輝いた。最多勝、最優秀防御率、勝率、最多奪三振すべてトップの4冠。野球界を盛り上げるスーパースターの出現は、チーム、セ・パ関係なく、うれしくなる。
大エースとはどんな状況でも負けない投手。だから阪神にも…そんなハナシを先日書いたけれど、いつの時代も頂上決戦へ駒を進めるチームには、そんな「大黒柱」がいる-今回もあらためて思い知らされるシリーズだ。
以前とくらべ、サッカー人気が下火だと聞くけれど、やはりスーパースターのいる時代、そうでない時代で、影響があるのか。
そんな視点でいえば、ワタクシ西宮でジュニア世代の野球に少し携わるので最近はよく見掛ける。大谷翔平、そして、山本由伸を真似る子どもたちの姿を…。
少し思うところがあって広く野球振興を考えてみることにする。
ここ数年、野球人口の減少が叫ばれるジュニア世代だけど、果たして、卒業文集にこんなふうに綴る子は減ってきたのだろうか。
将来の夢は、プロ野球選手になることです-。
実は、僕の肌感覚でいえば極端に減っている感じはしなかった。
けれど…。
「かなり減ってますよ。西宮は野球の盛んな地域だと思いますけど、ウチのチームも単体で活動するのは、もう難しくなりましたから。何とか手を打たないと…」
西宮市内で活動する少年野球チーム「苦楽園オールヒーローズ」監督・野村努の言葉である。地域柄、同チームにはプロ野球選手のご子息も多く在籍し、阪神でいえば福原忍、そして、オリックスなら田口壮のジュニアもかつてこのヒーローズでプレー。現在も数人の「プロのDNA」を野村は預かっている。
甲子園の街=西宮でさえ競技人口が減っているリアル…。前述した野村の危惧は数年前のものだけど、この度、ヒーローズは他チームとの合併を余儀なくされ、来春からチーム名を変えて再出発する道を選ぶことになった。
そりゃ、今の時代、スパルタや勝利至上主義じゃ人は集まらない-そんなご意見があるかもしれない。しかし、野村のチームはその真逆。ヒーローズでは勝てない-そう言って地域外のチームを選ぶ親も多く、「強さ」という意味では無名であり、スパルタ、ハードトレとも無縁のチームなのだ。
野村に子を預けた福原は以前、僕にこんなことを言っていた。
「小学生は楽しむことですよ。勝つことを優先して、大人が罵声を浴びせて、こどもたちが野球を嫌いになったら意味ないでしょ。ケガしないこと。野球を好きになること。それで十分です」
こう書けば、ジュニア世代で緩いチームに入れば、甲子園へ行けない…という声もあがるかも。でも、それもハズレです。
今夏の甲子園で決勝を戦った智弁学園のメンバーに、ヒーローズ卒団の選手がいる。阪神に新入団する前川右京の親友だ。
この続きは次回。=敬称略=