お前の体は一体…
【2月17日】
カープのキャンプ地へいつ頃いこうか。今月取材すると決めた各球団のスケジュールを見ながら思案している。ひと昔前に比べれば沖縄県内にキャンプ地が集まったことで2月の対外試合が増えた。
できれば、じっくり練習を見たい。だからカープの試合のない日は…なんて計画しつつふと思う。
もう、鈴木誠也はいないのか、と。あらためて書くのもヘンだけど、何だかアッという間だった。何が?って彼の進化である。
オッサン記者の〈体内時計〉では、え?いつの間にそんなスーパースターに…ってなもので。
きのう中田翔のハナシを書いたけれど、鈴木誠也と中田翔では、僕の中でスタートが違う。初めて誠也を見たのは、スター候補が脚光を浴びるセンバツでも夏の甲子園でもない。誰も注目していない底冷えするジムの一室だった。
14年、冬のことだ。当時の彼には今の雰囲気も体格ももちろんない。カープ担当を離れて久しい僕にとっては、そのジムに集まる若鯉のひとりでしかなかった。
ジムとは、広島のトレーニングクラブ「アスリート」である。
おとといから同ジムの平岡洋二代表に証言を求め、思うところをあれこれ書いている。キャンプ地で汗を拭う若虎を眺めながら。
誠也の進化を振り返れば、特筆は、トレーニングで8キロ増量した高卒2年目のオフ。あの頃、彼は自動車教習所に通いながら「アスリート」へ足を運び、夕方カープの大野寮へ戻ると、深夜までバッティング練習に励んでいた。
当時、平岡は誠也に言った。
「お前の体は一体、どうなってるんだ?」
誠也は2カ月のトレーニングで脚筋力が約40%アップしていた。これは平岡の指導歴においても驚くべき「反応」だったそうで、その脚筋力の増量を裏付けるように体重8キロ増にもかかわらず、垂直跳びは10センチ強アップしたという。
読者の皆さん、その場で飛んでみてください。垂直跳びなんて簡単に10センチも伸びるもんじゃない。ドラフト上位でプロ野球に入る選手だからもともと相応の筋力は備わっている。そのうえで誠也は、ゆくゆくは日本を代表する走攻守一流のプレーヤーになるため、自ら信じたトレーニングをストイックに、愚直に、貫いていたのだ。
「トラウトのように…」。誠也は、憧れのメジャーリーガーをいつも口にしていた。自ら欲したパワーとスピードの兼備へ着々と進化を遂げていたわけだけど、当時そんなプロセスを日々報道するメディアもなかった。誠也しかり、球界の成功者を見てきて感じることがある。彼らに共通することはすぐヨソ見をしないことである。 こうだと信じたことをまずやりきる。やりきって壁にぶつかれば次また別の道をやりきる。やりきる前にヨソ見をすれば、その道が正解か不正解かさえ分からない。誰がどうやれば一流になれた、なれなかった等、この類にデータなどないけれど、古びた取材ノートをめくればそんな答えにたどりつく。=敬称略=
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