7月4日の夜に思う
【7月4日】
『7月4日に生まれて』というトム・クルーズ主演の映画を思い出した。この夜、米国独立記念日を祝うかたちで在大阪・神戸米国総領事館総領事の方がマツダスタジアムで始球式を行った。
ニューヨークメッツのユニホーム姿で、捕手坂倉将吾が構えた真ん中低めへナイスピッチだった。大学時代に図書館のビデオライブラリーで『7月4日に-』を視聴した記憶があるが、中身を詳しく…と言われれば自信がない。ただ確か、映画の主人公はヤンキースファンだったような…いや、そんな細かいツッコミよりも、この始球式で本来打席に立つべき阪神の1番打者が不在だったことが気掛かりな夜になった。
近本光司が右肋骨骨折のため、出場選手登録を抹消された。負傷の経緯、回復の見通しなどは虎番の記事に委ねるが、とにもかくにもリードオフマンの離脱は痛い。
この7月4日から近本不在を全員でカバーして戦うしかないわけだけど、頼りにしている西勇輝が初回5失点では心の傷口に塩を塗られたような…。首位阪神とカープはともに74試合を消化し、これでその差は2・5になった。
マツダスタジアムの一塁ベンチ脇でカープ監督の新井貴浩と話をした。とりわけ、カープは投手が踏ん張っている印象がある。正直にいえば、シーズンの折り返しでこの位置につけているとは、開幕前後は予想できなかった。失礼を承知でそう伝えると、新井は…。
「なるほど…。もちろん選手が頑張ってくれたおかげで、この位置にいるんですけど、僕としてはまったく驚きはないし、不思議だとも思ってないんですよ。うちの選手は力ありますし…」
新井は慢心でそう語っているのではない。選手への「信頼」が根底にある。戦前、評論家諸氏による順位予想で目についたのは概ねカープの下位、Bクラスだった「見返したい」-などと新井は口外しないが、闘争心に火が…いや、もともと点火していたのだけど、外からの低評価でさらに燃え盛ったというのだろうか。うちの家族(新井は選手やチームの仲間をそう表現する)の底力をみくびってもらっては…。そんな反骨心だと察する。新井とそんな話をしながら…米国の独立記念日といえば、思い出した。
7月4日に生まれた上本博紀である。現在阪神タイガースWomenの監督を担う彼はこの日、37歳になった。新井が阪神に在籍した当時、上本は新井を兄のように慕い新井もまた上本を弟のように家族同然のつき合いをしていた。
上本といえば、左肘の側副靱帯や左足首の前距腓靱帯の損傷、右手親指骨折、左上前腸骨棘亀裂骨折…ケガに抗う野球人生だったがその度に不屈の闘志で這い上がってきた。そんな彼だから仲間に慕われ、リスペクトされた。
ケガだけはするなよ…岡田彰布もいつも願うことだけど、不可避なアクシデントもある。近本の早期復帰を願う夜に完敗。虎の反骨心に火が付いた7月4日だと、後に振り返りたい。=敬称略=