岡田阪神の「タスク」

 【4月30日】

 眠い…。夜中にサッカー五輪代表の負けられない戦いをテレビ観戦した。

厳しいアウェーを勝ちきり、早朝に歓喜したわけだけど、チームを率いた監督、大岩剛のコメントが胸に響いた。

 「『一体感を持て』と言うのではなく、アプローチとしては、選手にタスク、責任、自信を持たせる。結果として、試合に表れて、それが団結を生んでつながりが大きくなった」

 U-23の侍ブルーが日本時間30日、U-23アジア・カップ(ドーハ)の準決勝でイラクを下し、決勝に進出。上位3カ国に与えられるパリ五輪の切符を見事につかみ取った。今大会を初戦からずっと見てきたが、韓国に負けたときは「もうあかん」とパリを諦めかけた。でも、そこから中東の難敵相手に連勝を飾るあたりにこの五輪代表の地力、結束力を感じる。

 「勝負の世界」を取材してきて思うことは、組織がバラバラのチーム、みんなが別の景色を見ているチームは、個々の力があっても大一番で勝ちきれない。じゃ、どうすればいいのか。

 大岩は「みんな、まとまろうぜ」とは言わなかった。キーワードは「タスク」「責任」「自信」だった。

 野球ファンには聞き慣れない「タスク」とは、英語でtask。「仕事」「課された務め」が由来の言葉だけど、ニュアンスとしては、大きな仕事ではなく、小さな単位の仕事。サッカーでは「戦術的なタスク」なんて言い方もする。個々のタスク-。確かに大岩ジャパンのそれは素晴らしかった。

 さて、こちらマツダスタジアムで僕の寝ぼけ眼がシャキッとしたのは初回である。村上頌樹が先頭の秋山翔吾から被弾。ビックリ…しかし、それをすぐ取り返すあたりに首位阪神の地力、結束力を感じるわけだけど、よく考えれば、虎将・岡田彰布も選手に「タスク」「責任」「自信」を持たせ、それが団結を生んでいるように見える。

 木浪聖也が3試合ぶりにスタメンに名を連ねた。シャキッとさせられたのは二回の守備。最後のバウンドが大きく跳ねた矢野雅哉の遊ゴロに一瞬イヤな景色がよぎったけれど、これを落ち着いてさばいたことで、あのヤクルト戦の負の連鎖を断ち切ったように思える。バットでも、会心ではなかったが、ヒットも打点も記録した。

 「チームが勝つことが全て。その為に自分ができることであったり…そういうものを準備してできていたので」

 木浪は試合後、そんなふうに語ったが、これぞ木浪の「タスク」であり、良きタイミングをはかった岡田の用兵がズバリ…そう書きたくなる。

 3四球3得点の大山悠輔にも「タスク」を感じた。小園海斗の強烈な打球を好捕した三回の堅守はもちろんだけど、走塁意欲も相変わらず素晴らしかった。先頭四球で出塁した四回にS・ノイジーの安打で全力で二塁をオーバーラン。あわよくば次塁を狙う4番のこの果敢な姿勢こそが虎の団結を生み出している。大事な一番で勝ちきるために個々が持ち場で仕事を…。今年もそんな小さな力がどんどん積み重なっていく。=敬称略=

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