これからあがっていく
【5月29日】
試合前に甲子園近くの馴染みのカフェへ行くと、「背番号49」のサイン色紙が飾ってあった。日付は24年5月。大竹耕太郎が最近来たのか…なんて思いながら旧知の店主に聞いてみた。
これって、大竹選手の…
「いえ、今成さんのです」
え?ナリ?
「はい。すごく久しぶりに来ていただいて…。解説のお仕事ですかね」
阪神の49番といえば、大竹。リーグ優勝、日本一に貢献した昨年からすっかり定着しているが、ここ10余年でいえば、今成亮太か。12年途中に日本ハムからトレードで加入し、遊び心満タンのキャラで虎党の心を掴んだ男…。
「今年の阪神と日本ハムって似てるんですよ。投手力も強いし…。同じチームが試合をしているみたい」
かつての49番がこの日ABCの情報番組でそんなふうに語っていた。
大竹と伊藤大海の投げ合いならロースコアの接戦になる。となれば、ミスが命取り…。今成の戦前解説を聞きながらそんな予想を立てて試合を追ったわけだが、序盤に阪神ディフェンスの綻びが出てしまった。
木浪聖也がゴロを捕ってから無駄のない動きでホームへ。これがやや三塁側へそれて坂本誠志郎がミットに当てながら後逸…。二回である。1死二、三塁で前進守備。大竹が石井一成を遊ゴロに打ち取り、バックホーム態勢の網にかけた格好だったが、二者の生還を許した。木浪の野選と失策が記録されたが、坂本も悔やんだはずだ。
せめて1点でとめておけば…。
いや、まだ序盤。こんなときはバットでカバーすれば…ほら、木浪が打った、マルチ安打。三回はチーム初安打を放ち、四回は2死から安打で繋いで得点に絡んだ。それでいいじゃない。
負けるときはこんなもの。なんて呑気なことを書けば叱られそうだけど、交流戦を全勝で乗り切れるわけではない。あとふたつ、やり返せばいい。
「結果、結果といわれるこの世界で結果が出ないときはやっぱり苦しいですし…。難しいですけど、でも、自分がやるべきことは変わらないので…。(試合に)出ても出なくても、試合前にやることも変わらないし、結果を出すためにはもちろんですけど、苦しいときに何ができるかって思ってずっとやってきましたので」
今年の木浪聖也はどう?
あらためて本人にそう聞けば、クラブハウスへ通じる甲子園の通路で胸の奥にあるものを語ってくれた。
しんどい時期でも、それを良いようにとらえて?
「もちろん、そうですね。悪いように捉えれば、とことん悪いほうにいっちゃうので。自分はこれから上がっていくしかない…というか、交流戦から上がっていくと思っているので…。自分が機能すれば繋いで点が入るパターンもできますし。チームとして線になっていくためにも…」
大竹は岡田彰布から「遊び心」を教わり軌道修正したという。はたして、木浪はどんな心で上がっていくか。=敬称略=