走路がグチャグチャ?
【6月11日】
オリックス戦取材の前に阪急西宮ガーデンズに寄った。同ショッピングモールは西宮スタジアム跡地に建設されたわけだけど、西宮市民の僕にとってはありがたい商業施設だ。
まあ広いのでいつも全館歩いて回ることはないけれど、ぶらり、最上階のクリスタルガーデンに上ってみると、阪急西宮ギャラリーに「阪急ブレーブス」栄光の歴史…優勝旗や個人記録のトロフィーが飾ってある。中でも目を引いたのが「世界の盗塁王」福本豊を表彰した数々の盾。そこにはシーズン106盗塁のブロンズも…。
106って…。
この先絶対に破られることにない記録である。
オリックスの前身が阪急であることを知らない世代も増えてきた。かつて阪神でもコーチを務めた福本が今も放送局から「関西ダービー」の解説を依頼されることが多いのはそういうわけだが、「世界の盗塁王」は今シーズンの両軍の「足」をどんなふうに見ているのか。他社の評論家さんなので当欄で解説していただくことは叶わないけれど、気になったりもする。
本紙記録部に確認すれば、今季60試合を終え、阪神の17盗塁は12球団最少で両リーグで唯一「20」に満たない。
セ・リーグ上位3チーム(広島、阪神、巨人)の攻守の成績、各部門を比べてみると、防御率は首位の広島と双璧。本塁打数は3チーム競っているが、やはり、チーム打率が芳しくなくリーグ最低。打線が湿りがちになれば、どうしても数少ない出塁を…って、ああだこうだ書いてもしゃあないか。
四球はどうか。打者が昨年より選球に苦労しているのか。195四球はリーグ2位だから、必ずしもそうとは言えない(同リーグ最低は広島の114四球だから阪神とは大差である)。
じゃ、これは?
03年=115(リーグ1位)
05年=78(リーグ2位)
23年=79(リーグ1位)
阪神Vイヤーの盗塁数だ。03年、05年は赤星憲広が一人で60以上走ったわけだけど、確かにあの頃は他球団のバッテリーが阪神戦をイヤがっていた。もちろん、23年だってそうだ。
一年前は60試合消化時点の盗塁数が33だから、今季の約2倍。24年は現状のままならシーズン41盗塁ペース。そもそも盗塁シチュエーションを作れなければこの話はできないが、主砲大山悠輔が戦列復帰し、指揮官が理想とするオーダーが構築できれば、チームの「足」も本領を取り戻すはずである。
福本といえば逸話を思い出す。今では考えられないけれど、当時、阪急の対戦チームは、試合前に一塁付近の走路に大量に水をまき、福本にスタートを切らせないようにしていたという。
「こんなグチャグチャにしたらお前らも走られへんやないか」
福本は苦笑していたそうだが、それでもパ・リーグ他球団の阪急戦の標榜は「福本の足をとめろ」だった。
今年もチカナカの足がウザい-。ヨソの球団からそんなボヤキが聞こえてくる日を待ちたい。=敬称略=