全身全霊を尽くして…
【9月27日】
2位からの大逆転…。石破茂自民党新総裁である。過去最多9人が立候補した同党の総裁選はこの日の夕方投開票。僕もこのときばかりはプロ野球取材を離れNHKの生中継に見入った。
1回目の投票では高市早苗人気が他候補を圧倒。女性初の総裁誕生か…と思われたが、決選投票の末、前例のない混戦を制した石破元幹事長が第28代総裁に選出された。
この人、野球は好きか?
どこかのファンか?
長年この業界に居ると、ついついそんな目で見てしまうのだが、例えば、高市サンは奈良出身で生粋の猛虎党であることは有名。昔、小池百合子都知事とともにデイリースポーツの虎座談会に登場してもらったこともあった。彼女が総裁になれば…いや、待てよ。岸田文雄総理のときはカープは一度も優勝していない。岸田サンはご存じ広島一区選出の鯉党であり、自身のSNSでも度々「カープ愛」を綴ってきたが、果たして石破サンは?
鳥取出身初の新総裁に特定球団の色はついていないようだが、プロ野球に関しては気になる発言もあった。
16年の春、当時、地方創生担当大臣だった石破サンは衆院予算委員会で、プロ野球16球団への拡大構想に前向きな姿勢を示していた。
「球団が増えていくということは、それだけ若い子たちに競争の機会が与えられるということ。楽天イーグルスの仙台のように地域活性化にもなる」
「民主導であり、政府が言ったからそうなるわけでもない」と前置きしながらも、「なぜ球団を増やせば地域創生につながり、若い人たちの夢につながり、経済に貢献するかということを政府として検討していく」という趣旨の発言をしていた。
あれから8年。「この日本国をもう一度、皆が笑顔で暮らせる安全で安心な国にするために、全身全霊を尽くしてまいる」と決意を示した自民党新総裁。来月アタマ、第102代総理大臣に就任すれば、すぐ「地方創生とプロ野球」に言及するとは思えないが、その施策に注目していきたい。
広島の夜は延長戦。最後まで全身全霊で戦う岡田彰布と新井貴浩の相好を見れば、こんなときだから高市サンの猛虎愛、岸田サンのカープ愛を覗いてみたい気もするが、裏金問題や憲法、安全保障…問題山積の永田町はそれどころじゃないか。
国民誰もが制約を受けず平和にプロ野球を楽しめる社会を…
そんなことを願いながら東京ドームの戦況が気になった。
奈良出身の元虎党が打ったらしい。岡本和真の先制打が伝わるマツダスタジアムで阪神の苦戦を眺めるのはつらいけれど、佐藤輝明の一発、森下翔太の同点打に勇気をもらう。
泣いても笑っても勝つしか道はひらけない。「政界は一寸先は闇」とは昔から伝わる名言だが、勝負の世界はすべてそう。2位からの大逆転は…。追い詰められて残り4試合。前例のない混戦、全身全霊でいくのみだ。=敬称略=