頭文字真ん中のリーダー

 【10月19日】

 虎のJFKもそうだが、あのKKRも人名の頭文字を取っている。日本の名のある経営者でKKRを「知らん」という人はいないと思うが、僕はその社名の由来を聞いたことがなかった。

 ジェローム・コールバーグ・Jr.(Kohlberg)のK。ヘンリー・クラビス(Kravis)のK。ジョージ・ロバーツ(Roberts)のR…この3人の共同創設者によって分かりやすく社名が付いたアメリカの巨大投資会社KKRだけど、真ん中のK=クラビスが日本経済新聞の連載「私の履歴書」に登場している。

 今月1日からスタートしてこの日が18回目。毎朝、Kの筆に触れながら個人的にがっつきたくなる類いとともに組織論にもふむふむとなる。

 別の経済誌によれば、KKRの年間売り上げは2180億ドルとも。日本円にして約32兆5921億…もう、よく分からん世界だ。どうすれば、そんなPE(プライベート・エクイティ・ファンド)の会社を築けるのか。会長のクラビスは「-履歴書」の中で企業の成長戦略についても語っているが、これがなるほど、おもしろい。

 【数年前に入居したニューヨークの新本社は、全てのフロアを結ぶらせん階段の幅を特別広く取ってある】

 まあ、オシャレな造りなこと。

 いや…へぇ~の的はそこじゃない。

 クラビスはそのワケを…

 【社員が鉢合わせたときに自然に意見を交換できるようにしたかった】

 イノベーションのプレゼンは会議室で!なんて拘りはない。飛びきりワイドならせん階段で行き交う同志が足を止め、イノベーティブに談論すればいい。斬新な切り口が新発想を生む。

 さて、我らが阪神の新機軸といえばJFKの真ん中、Fのもたらすそれである。新監督、藤川球児の言葉を聞けば、固着概念は不要に思う。

 「そこなんですよ。僕がやろうとしていることは…」

 フェニックス・リーグを視察した新指揮官が宮崎で語ったのは、同志、コーチ陣と共に築くべく創生のイズム。例えば、激戦の内野手争いについて、レギュラーを獲るために求めることを問われ、こう言ったという。

 「それはもう、他のコーチがいますからね。誰がいいかを一人で決めるということは、なかなか、僕が思うところにそういう感覚はなくて。例えばそういうときはあるかもしれないですけど、基本的にはそうは考えないです」

 風通しのリフォームは組織の再興を生む。「理想の野球」を聞かれた就任会見では、共有するビジョンをコーチ陣と話し合う前に「固まってしまった意見を述べることは控えたい」と先んじて返答…それだけで新風を感じた。

 日経紙でクラビスは綴っている。

 【「アイデアがある!」と声を上げる機会を全社員に与え続けたい】 

 KKRのトップが同志に「大切にしてほしい」と説くのは「イノベーション」と「俊敏さ」なのだとか。

 新機軸のアイデアもそれを具現化するバイタリティーも…阪神新監督の弁に「動かす力」を感じる。=敬称略=

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