「6年目の採点」を待つ

 【10月24日】

 阪神タイガースオーナー代行の谷本修に聞いてみた。5年前のドラフトについて…。谷本は言った。「踏ん張りどころですね」。その心を読めば「ロマン」の行方が見えてくる。

 ここグランドプリンスホテル新高輪の会場が沸いた佐々木朗希世代。全国のファンから喝采を浴びた19年秋の阪神ドラフトはこう呼ばれた。

 「ロマンドラフト」

 西純矢、井上広大、及川雅貴、遠藤成、藤田健斗…阪神が1位から5位まで連続で高校生を指名したのは1966年の1次ドラフト以来、53年ぶり。しかも、その5選手がすべて甲子園出場経験者という華やかさ。監督の矢野燿大はフロント陣に「夢を追い掛けましょう」と語ったわけだが、その当時の球団本部長が谷本だった。

 「藤川新監督をはじめ首脳陣は投手野手ともに改善点を把握している様子ですので、彼らが素直に取り組めば、未来が開けてくると思っています」

 いま本社で要職につく谷本に「19年組」の未来を聞けば、そう答えた。

 ドラフトの採点は5年後…。僕はいつもそう書かせてもらうが、早いもので「ロマンドラフト」からその5年が経った。井上がプロ初本塁打を放ち、及川が先発初勝利を挙げた24年。次代エース候補の西純を含め、6年目となる来季は確かに「踏ん張りどころ」。残念ながら遠藤は構想外を告げられたが、しかし、阪神球団はこの「6年」という数字に希望を寄せている。

 高卒1位の藤川球児が覚醒の片鱗を見せたのが「JFK」結成前夜の6年目…04年だった。ロマンを夢に変えるべく組閣された「球児政権」への期待値が谷本の言葉に溢れるのだ。

 さて、その球児が監督として「初登板」したドラフトは果たしてどんな点数がつくのか。意中の金丸夢斗を外し瞬間的に落胆したものの、肌感覚でいえば、やはり会場を最も沸かせたのは今朝丸裕喜を2位指名したとき。リアルを描くと、ほかの指名選手への拍手はまばらだった…が、そんな年のドラフトこそゾクゾクする。

 ドラフト前日の23日、東京文京区のホテルに集結した「チーム藤川阪神」は総勢17人。監督、球団社長、同本部長、同副本長ら幹部、そして統括スカウト以下8人のアマスカウト、1人のプロスカウト、書記。このメンバーでドラフト直前会議を2日間行い本番に臨んだ。新監督は選手として、また球団SAとして関わってきた編成部門の面々を「本当に信頼がある」と語り、だからこそ近年のドラフトを「踏襲する」と明言した。

 では「踏襲」された阪神のドラフトその理念とは何か。金本知憲政権から継続する「素材ドラフト」である。せっかちな視点を除け、ウイークだって上等、前のめりに「おもしろい」素材を獲って育てる。今回の直前会議の冒頭、球団社長の粟井一夫があらためて強調したのは「素材-」の継続と「フロント主導、育成重視の編成方針」の再確認だったという。球児の信頼の結晶、今ドラフトの採点はいつがいいのか。見定めは先でいい。=敬称略=

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