監督球児の主観と客観

 【12月9日】

 佐野大陽がおもしろい。おもしろいというのは、笑わせてくれる…という関西的なそれではもちろんない。プロ野球の領海で成功しそうな素材という意味でおもしろそうだ。

 高知商の藤川球児がドラフト1位で入団した98年から数えて…え~もう指を折るのが面倒になってきたけれど、かれこれ20余年、阪神の新入団会見を取材してきた。親子ほど歳の離れた選手も増えてきた中で、さて、今年入団のZ世代はどんな所信表明でワクワクさせてくれるのか…なんて思いで登壇した金の卵を見させてもらったが、ただただインスピレーションで「いいな…」と感じたのが、富山GRNサンダーバーズからやってきた内野手だ。

 「一日でも早く佐野大陽という名前と顔を覚えていただけるように、泥くさく全力でプレーして……」

 泥くさく…うん、言葉にしなくても顔相ににじみでている。ちなみにこの場合の「泥くさい」とは、泥の臭いをプンプンさせるという意味ではない。大方の辞書には「洗練されたやり方ではないが、着実に物事を行うこと」-とある。武骨に、格好つけずにコツコツと…そんな風を大陽に感じる。

 たまたまとはいえ、指名が多くなった独立リーガーへの期待感を指揮官は携えている。きっと、彼らの反骨心、反発力へのそれを…。 

 独立リーガーはハングリー。用具も衣も食も環境そのものにサバイバル性が強いので自主性に長ける。概してそんな選手が多いことは間違いないはずだが、そのあたり藤川球児はどう感じているのか。金屏風の会見から降壇したあと、ストレートにぶつけてみた。

 主観でいいのですが、独立リーガーはやはり自主性が高いものですか?

 「高いです。高いですけど…。これまで育成で入ってきた選手を見てきた自分としては、満足してしまうケースも何件か見ているので。背番号が2ケタになった時点で満足してしまうケースも沢さん見ていて…。気付いたときにはもう遅いという。だから歩みを止めない、満足しないというのは、どこまでいっても続けなければいけないので。そこは自分が居る間は言えますからね。プロ野球選手になったというところで満足してしまうんですよね…」

 プロでも理想像の設定は十人十色。NPBを大願に描いていた者、そのずっと先の高いところを目標に据えている者…。指揮官としては、当然、タテジマを着て満足してもらっては…。

 主観、客観で球児は続ける。  

 「自身の設定が『2ケタになる』という設定だと、そこで止まってしまう選手たちもこれまで居たんだけど、ウチの場合は石井大智という選手がいたりして、成功実例があるからこそ育成でも自信を持って引き上げられるだろうという。ただ、野手に関してはなかなか出てきていないので…。(野原)祐也とか、片山はそうか…」

 独立リーグ出身で2桁ナンバーで入団した内野手、佐野大陽はどうか。担当スカウトの筒井和也は言う。

 「あいつ、おもしろいですよ」

 次回、続きを書きたい。=敬称略=

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