思わずかわいいッ!四日市あすなろう鉄道
思わず「かわいいッ!」となでたくなる電車が四日市にいた。ナローゲージ。両足をちょっと開いたぐらいの幅の線路を「-あすなろう鉄道」の電車は周囲を笑顔にさせながら、肩をゆすってのんびりゴトゴト走っていた。
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パステルカラーに彩られた3両編成の電車は、ホームに近づいてきても、いっこうに大きくならなかった。
くぐるように頭を下げて車内に入る。手が届きそうな天井、向かいの座席と膝同士がぶつかりそうな車幅、コンパクトな運転台。遊園地にでも走ってそうだが、1日約1万人、年間360万人が利用する地元に密着した立派な鉄道だ。沿線に高校が4つあり、朝夕のラッシュ時には四日市駅はごったがえすという。
762ミリの線路幅をゴットンゴットンと継ぎ目を拾いながらのんびり走る。中間車両は昭和20年代製。平均時速は約25キロ。モーター音が腹に響き、小刻みな揺れが心地よく、自然に笑みがこぼれてくる。
かわいいけど歴史は古い。1912(大正元)年に三重軌道が日永~八王子間を開業したのが始まりで、65年に近鉄が受け継ぎ、内部・八王子線として走り続けてきた。
2012年、近鉄と四日市市で今後のことが話し合われ、BRT(バス高速輸送システム)への転換も検討されたが、17万人にも及ぶ地元住民の署名や存続の運動が実を結び、四日市市が鉄道車両や施設を所有し、同市と近鉄が出資する新会社が運営する「公有民営方式」が採用され、昨年4月1日「四日市あすなろう鉄道」として生まれ変わった。昨年9月には新型車両も走り始めた。
車窓を眺めていると、電車と同じ色の帽子をかぶった幼稚園児たちが元気に手を振っていた。車内から笑顔で手を振り返す見知らぬおばあちゃん-。100年以上繰り返されてきたであろう何気ない風景に、気持ちがほっこり優しくなった。