出かけよう!おとなの遊山 新観光列車「四国まんなか千年ものがたり」
“四国三郎”吉野川がつくり出した大歩危・小歩危の渓谷群。この土讃線の名勝地を4月から新たな観光列車が走り始めた。その名も「四国まんなか千年ものがたり」。雄大な景色とこだわりの料理、車内に流れるゆったりとした時間。“おとなの遊山”を満喫した。
◇ ◇
30年以上前の気動車を、JR四国が見るも鮮やかな彩りの観光列車としてよみがえらせた。
86年に製造されたキハ185系を約1億8千万円かけて改造した「四国まんなか千年ものがたり」。日本の四季をテーマに3両それぞれ違った色の外装と、古民家をイメージした内装が特色だ。
1号車は「春萌(はるあかり)の章」。落ち着いた木目調の車内に、若葉色の鮮やかなソファが配置されている。3号車は「秋彩(あきみのり)の章」として、ソファの色が紅葉や果実をイメージしたオレンジ色に。車内はやや薄暗く、暖かい間接照明がゆったりとした空間を演出する。2号車は「夏清(なつすがし)・冬清(ふゆすがし)の章」。川や風の流れをイメージしたデザイン。窓に向かって長さ7メートルのベンチソファが印象的だ。
昨今の観光列車は有名デザイナーが担当して腕を競い合っているが、「千年ものがたり」をデザインしたのは松岡哲也さん。JR四国鉄道事業本部に所属する社員デザイナーだ。「徳島県産の杉などたっぷり使ってます。天井部分は昔の民家によくあった、囲炉裏(いろり)の火棚をモチーフにしているんですよ」と語る。
やや緊張した面持ちで女性アテンダントが料理を運んできた。下り「そらの郷紀行」で提供されるのは、金刀比羅宮が運営する「神椿」が監修する「さぬきこだわり食材の洋風料理」。讃岐牛とオリーブ豚のハンバーグは舌の上であっという間に溶けてしまった。
食事だけでなく、車窓も“メインデッシュ”だ。スイッチバックで知られる日本屈指の“秘境駅”坪尻で運転停車。ホームに降りて記念撮影や列車の通過シーンを楽しむことが出来る。
多度津から大歩危間。特急「南風」なら約1時間で駆け抜ける距離を2時間27分(上りは2時間54分)かけてゆっくりゆっくり走る。大歩危・小歩危の名勝地で速度を落とすので、ラムネ色の吉野川の急流と雄大な渓谷美を堪能することができる。食事も含めた値段は9240円(下り多度津~大歩危間、おとな1人)。四国の春夏秋冬を訪ねてでかけてみてはいかがだろう。
◆運転区間 土讃線多度津~大歩危間65.5キロ。1往復。下りは「そらの郷紀行」上りは「しあわせの郷紀行」として運転。
◆運転日 9月までの金・土・日・月曜と祝日に運転
◆使用車両 キハ185系気動車3両編成(全車グリーン車)、定員は55人。
◆料金 全席指定で、多度津~大歩危間3740円(特急料金・グリーン料金含む)。これに下りは「さぬきこだわりの洋風料理」5500円、上りは「おとなの遊山箱」4500円の「食事予約券」をそれぞれ予約することができる。
◆運行ダイヤ 下り「そらの郷紀行」多度津10:21→大歩危12:48、上り「しあわせの郷紀行」大歩危14:20→多度津17:16。
◆発売 乗車の1カ月前から全国のみどりの窓口、主な旅行会社で発売。