龍馬 最後の手紙 見るなら今ぜよ~大政奉還から150年「志国高知 幕末維新博」
江戸幕府が政権を朝廷に返上した「大政奉還」から今年で150年。この節目の年に、坂本龍馬や板垣退助をはじめ、幕末に数多くの人材を生んだ高知県で2年にわたって行われる大イベント「志国高知 幕末維新博」が開幕した。そのメーン会場がある高知市内を訪れた。
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今年3月にスタートした「志国高知 幕末維新博」は2019年まで2年にわたって、県内22の歴史文化施設で開催される。そのメーン会場として、高知城の目の前に新たにオープンしたのが「高知城歴史博物館」だ。
土佐藩主だった山内家伝来の資料をはじめ、国宝や重要文化財を目にすることができる。中でも注目は、今年1月に発見されたばかりの、龍馬が暗殺される5日前に書いた手紙だ。つまりは龍馬が生前最後に書いた手紙ということになる。
文中に「新国家」という文言があり、龍馬が新政府建設にいかに深く関わっていたかの証明でもあるのだとか。筆まめで知られる龍馬は数多くの手紙を残しているが、「新国家」という言葉が出てくるのはこの手紙だけという。全国初公開というから、龍馬ファンならずとも必見。ただし、5月7日までの期間限定の展示(それ以降は複製を展示予定)なので急いでほしい。
ほかにも、さまざまなものが展示されているが、目を引いたのが「変わり兜(かぶと)」と呼ばれるユニークな形をした兜だ。一見してゴリラの顔のように見える兜やまるでシルクハットのようなもの。うさぎの耳をかたどった兜など、さまざまなデザインが並ぶ。他の大名家でも「変わり兜」はあるのだそうだが、ここまでの数がそろうことは極めて珍しいという。
うさぎの耳をイメージした「兎耳形兜」は、うさぎの持つ俊敏性や後ろへ進めない(後に引かない)などの性質にあやかって多く大名が作ったそうだ。ちなみに、耳の部分は和紙と漆で塗り固めて作られているのだという。しかし、紙の兜で果たして戦えたのか?同館の学芸員によれば「戦場で使うものではなく、あくまでも美術品として作られた」そうだ。
館内では、無料の音声解説もある。手持ちのスマートフォンなどで展示品の内容や見どころなどを聞くことができる。日本語や英語など5カ国語に対応しているほか、土佐弁による解説もあるのだという。
高知城は、全国に12しかない江戸時代以前に築城された「現存天守」のひとつだ。高さ18・5メートル、三層六階の天守閣はやや小ぶりながら、最上階まで登れば、高知の市街地が一望できる。吹き抜ける風が心地いいが、こうした場所では珍しい、「昼寝禁止」の張り紙が。よほど気持ちいいのだろう。
高知市内へのエントランスとなる高知駅前には、「幕末維新博」に合わせてリニューアルされた高知観光情報発信館「とさてらす」がある。ここには歌手・福山雅治が主演したNHK大河ドラマ「龍馬伝」の撮影で実際に使われた龍馬の生家のセットがそのまま置かれている。セット内も自由に見学できるので、龍馬の気分を味わってみるのはどうだろうか。
◆高知へのアクセス
関西からは新幹線で岡山駅へ。さらに特急南風に乗り換えて、約2時間30分で高知駅に到着する。今回は途中の多度津駅(香川)から、4月1日にデビューしたばかりの観光列車「四国まんなか千年ものがたり」に乗車。終点となる大歩危駅(徳島)まで、木のぬくもりを感じる内装に、四季をイメージしたという列車で、四国の美しい里山や渓谷を堪能できる贅沢な旅を味わった。列車は月、金、土、日、祝日に1日1往復している。