SLやまぐち 新製「旧型客車」登場! 見た目は昭和初期 中身は最新鋭
1979(昭和54)年に走り始めてから38年-。日本のSL列車の象徴とも言える山口線「SLやまぐち号」に、9月から5両編成の新型客車・35系4000番台が投入された。昭和初期の外見や内装を忠実に再現しただけでなく、最新鋭の装備も盛り込んだ車内は評判も高い。鉄っ子記者がその魅力に迫った。
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見た目は昭和初期でも中身は21世紀の最新技術が満載-。JR西日本が会社発足後初めての新製客車となる35系4000番台は、「持続的なSL動態保存運転」を目指す同社の“本気”が詰まった渾身(こんしん)の力作なのだ。
ボックスシートが並ぶ普通車の車内は懐かしさとぬくもりがいっぱいだ。木製の座席、床、網だな…。アニメ「銀河鉄道999」をほうふつさせる。5号車のスハテ35は1927(昭和2)年製のオハ31系がモデルで、戦前車両の特徴でもある天井の二重屋根など忠実に再現されている。
洗面所は細かいタイル張りや、洗面台も旧車から型枠をとって“たんつぼ”まで再現している。「当時の車両の図面から、再現できるものは徹底的にこだわりました」とはJR西日本・下関総合車両所車両管理係の森川泰登さん。本来なら網だなも網糸で再現したかったそうだが、安全基準の関係から断念したそうだ。
最新車両だからもちろん冷暖房完備だ。旧型客車の雰囲気を崩さないように、冷房の送風口も一見だけではどこにあるか分からない。照明はLEDで明るく、トイレは洋式。ボックスシートにはモバイルコンセントも装備されているのがうれしい。
1号車のオロテ35は展望グリーン車。かつて特急「つばめ」で注目を集めたマイテ49がモデルだ。座席の赤いモケットや白いリネンが特別車両を強調。窓枠のカーテンが高級感を醸し出す。3号車には旧車両にはなかった「投炭ゲーム」や「シミュレーター」が設けられエンタメ性もバッチリ。子供たちもあきることはない。
乗り心地も電車にあるような軽快感はなく、揺れも少なくドッシリした感じだ。やや硬めの座席が、レールのつなぎ目を心地よく拾っていく。
最近の観光列車は超豪華装備や高級な価格が話題となる列車が多いが、「SLやまぐち号」は新山口~津和野で1660円(大人1人)。なにせ引っ張るのは蒸気機関車なのだ。絶対に安い!
腹のそこから響く汽笛、窓から入り込む煙、力強く走る蒸気機関車の熱さ、たくましさ-。SL列車は五感を刺激する。新型車両でさらに魅力が増した「SLやまぐち号」。乗らなきゃ絶対にソンだ。
◆SL「やまぐち号」
・運転区間 全席指定の快速列車、新山口~津和野62.9キロ
・運転日 12月24日までの土・日・祝日(11月23日は除く。11月25日はD51・200、12月16、17、23、24日はC56・160。それ以外はC57・1で運転)
・重連運転 11月26日はC57・1とD51・200の重連運転を予定
・定員 245人(グリーン席23人)
・乗車料金 全座席指定で乗車券の他に520円の座席指定券が必要。新山口~津和野まで大人1660円。1号車のグリーン車は2120円。乗車日の1カ月前の10時からみどりの窓口などで発売
・問い合わせ JR西日本お客様センター TEL0570・00・2486