花嫁のれん 幸せになりたい女性は必乗の和装観光列車
能登半島に“女性の幸せを願う列車”がある。七尾線を走る「花嫁のれん」は北陸の伝統工芸を表現したきらびやかな外観と、個性豊かな車内が自慢の“和装観光列車”だ。2015年3月から運転が始まりもうすぐ3年になるが、予約がなかなか取れないことで有名な列車に、「オレだって幸せになりたいッ」とオッサン鉄っ子記者が乗り込んだ。
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「花嫁のれん」とは婚礼の際に、嫁入り道具として娘の幸せを願って色鮮やかなのれんを持たせる能登地方の伝統文化。キハ48形気動車を改造した2両編成は、その名にふさわしい豪華絢爛(けんらん)な列車だ。
北陸の伝統工芸でもある輪島塗をイメージした赤と黒の車体に、加賀友禅、金沢金箔(きんぱく)をイメージした外観は実に鮮やかだ。正面の大きな前照灯が、他の気動車改造の観光列車にはない個性を主張している。
列車扉が開くと、近藤真彦も顔負けのギンギラギンに輝くエントランスに目がくらむ。1号車の壁の一部には国内シェア99%を誇るホンモノの金沢金箔が張られている。よく見るとさまざまな種類を重ね合わせた市松模様の装飾があざやかだ。
車内は日本庭園のようなユニークなレイアウト。「桜梅の間」「錦秋の間」など8つの半個室で構成され、それぞれの仕切り壁には加賀友禅のオールドコレクションで美を競っている。
金沢駅を発車して間もなく和装の女性アテンダントがおしぼりを配っていく。日本を代表する温泉旅館「加賀屋」(和倉温泉)で特別に研修を受けたのだという。
車内の食事も自慢のひとつだ。1・3号で提供される「スイーツセット」は、地元七尾市出身のパティシエ辻口博啓氏の「ル ミュゼ ドゥ アッシュ」オリジナル。辻口氏はNHK連続テレビ小説「まれ」でスイーツを指導したことでも有名だ。
季節ごとに変わる生菓子の「ミュゼ」は濃厚なチョコの甘さが口に広がり、深いりのコーヒーによくあう。「このスイーツはなかなかレベルが高い」と、隣の個室にいた妙齢の“3人鉄女”たちもうなる。このほかにオリジナルの箱菓子がついて2000円。値段にも満足だ。
「和と美のおもてなし」がふんだんにちりばめられた車内とサービス。惜しむらくは乗車時間が90分足らずということ。もっと乗っていたいという気持ちにさせる「花嫁のれん」。和倉温泉へのアプローチにくぐってみては!?
◆運転区間 金沢~和倉温泉 1日2往復
◆使用車両 キハ48形気動車2両編成
◆運転日 金土日祝日および多客期
◆運賃 全席座席指定の52人。乗車券のほかに特急券が必要。金沢~和倉温泉で2750円。
◆車内での食事 各列車にはそれぞれ特別メニューが提供される。「和軽食セット」(2号・2500円)、「ほろよいセット」(4号・2000円)、「スイーツセット」(1・3号 2000円)。利用する4日前までに予約が必要で、みどりの窓口および主な旅行会社で発売。またエントランスではオリジナルグッズなども販売している。
◆問い合わせ・JR西日本北陸案内センターTEL076・265・5655