大阪・梅田の激戦区で不動の人気誇る名店 全国の地酒を気軽に 鳥料理も絶品
春らんまん。酒好きにはたまらない企画が始まる。肩肘張らずネクタイを緩め、酒と肴(さかな)と会話を楽しむ「おやじ記者 ぶらり立ち飲み」。第1弾は焼き鳥と日本酒がメインの「たに」へ。激戦区の大阪・梅田のお初天神かいわいで不動の地位を築き上げているのには、やっぱり理由があった。
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極彩色のど派手な看板が入り乱れる商店街を南へ下り、もう少しでお初天神というところの右側に、デカデカと「たに」と手書きされた看板がみえる。そこから地下へ。店内は奥に立ち飲みカウンター、左手前がテーブル席となっていた。
店長の北川竜也さん(42)は昨年9月に引き継いだ4代目。一見こわもてだが、よくみると眼鏡の奥の目元がかわいい。周りから“ペイさん”と親しまれているのも分かる気がした。
「当店の良さは全国の地酒を気軽に飲んでいただけることですかね。ほぼ2カ月ごとに入れ替えており、常時20種類前後、取りそろえています」
ぶらりと訪ねた日はちょうど春メニューになったばかり。お酒好きのペイさんがセレクトしてくれたのが「明鏡止水」「紀土」「妙高山」という桜色のラベルの3本だ。うれしいことに菜の花のおひたしが付いてきた。もちろん、これ以外にも「祐星」「まつもと」「東洋美人」などの定番もおいてあった。
午後5時前だというのに12人用のカウンターはすでに定員オーバー気味。路面店でもないのにこの人気。ペイさんによれば、食べログでも高評価されており、最近は特に1人で来店する女性が増えているそうだ。
こんな話を聞くとおやじ記者の心は妙にざわつくが、人気の秘密は地酒だけではなかった。もともと東大阪市の布施で営んでいた焼き鳥店をベースにしており、鳥料理が絶品なのだ。しかも、地酒をはじめ、ほぼ全品350円均一というからありがたい。
「酒がこぼれるぐらい、なみなみと注いでくれる。本当はもっと遅い時間に来たいけれど、それだと満員で入れないから」とは常連客の1人。個人的におすすめしたいのは親鳥のもものたたきだ。親鳥はいまでは貴重だそうでコリっとした歯ごたえがあり、かめばかむほど味が出る。われわれおやじ世代には「あっ、これこれ」と昔懐かしい食感がよみがえるのではないか。
あと、鳥のお造り5種盛りはさすがに350円ではないが、これがホンマに1000円と思えるほどのお値打ち品だ。
たまたま隣同士になり、海外旅行先の女性の話題で盛り上がった大阪府茨木市在住のおじさんは「コスパが最高。早くから飲めるし、こんな店はなかなかないよ。ほぼ350円だから計算もしやすい」と絶賛。「まだ、こんな時間。もう一軒行きましょうや」と誘って来た。仕方ない。これも何かの縁。好奇心だけは人一倍のおやじ記者は取材もそこそこに店を出た。
◆管理運営しているのは大阪市天王寺区にある株式会社ユウ・フード・サービス(谷祐一郎社長)。「立ち呑み たに」を含め「鶏鶏Kitchen」「汁なしゴリラ」「六角鶏」など23の直営店、18のプロデュース店がある。