絶景に心の花が咲く “最果ての鉄路”をたった1両の気動車でのんび~り
根室本線・釧路~根室135.4キロは「花咲線」と呼ばれ、日本の最果てを走る絶景が魅力の路線だ。そこに“日本一地味な観光列車”が走り始めたと聞きつけ、霧の街から乗り込んだ。
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これが観光列車!?午前8時過ぎ。釧路駅・花咲線ホームには、キハ54の1両が出発を待っているだけ。北海道のローカル線によくある光景だ。
確かにこのキハ54は国鉄末期の1986年に製造され、車内は「JNR」マークが入った扇風機や、0系新幹線の座席を流用した車両もあるなど味わい深いが、とても観光列車には思えない。
「そこがミソなんですよ」とJR北海道広報部の平沢信さんはニヤリ。6月から「~いつもの列車で観光気分~」と銘打ち、沿線住民と企画したアイデアを盛り込んで、定期普通列車を“観光列車”として走らせているという。
列車はゆっくりと釧路を出発した。窓を開けると北海道の大自然の風が車内に入り込んでくる。車窓には牧場や北海道の原野が広がる。森林を抜けると潮の香りがしてきた。厚岸湾が見え始め、砂利敷きの海岸線が続く。シーズン中には昆布が一面に干され、道東ならではの風景が広がる。
厚岸を出て湿原に入ると列車は速度を落とした。ラムサール条約にも登録された別寒辺牛(べかんべうし)湿原だ。スマホなどで無料アプリを立ち上げると音声ガイドを聴くことができる。
別当賀(べっとが)を出るともうひとつの見どころ落石海岸に近づく。ここでもスピードダウン。「あ。タンチョウ」と車内から歓声が上がった。反対側からは「こっちにはワシが飛んでる!」オジロワシが悠然と輪を描いている。手つかずの北の大自然に感動は最高潮だ。
2016年にJR北海道が発表した「単独で維持することが困難な線区」に花咲線も挙げられている。「(予算的に)新しい観光列車を走らせるには…」と平沢さんは苦笑する。それでも車両は地味だが“金はないけど知恵はある”と、アイデア満載の取り組みの裏に、なんとか花咲線を守っていこうとする情熱を感じずにはいられなかった。
べつにコテコテに装飾された観光列車なんか必要ない。車窓がなによりも最高の思い出になるのだから-。
“鉄道の旅の原点”を再認識した花咲線の2時間32分だった。
◆実施列車
・釧路8:18~根室10:51(5627D)
・根室8:22~釧路10:46(5626D)
◆ゆっくり走る区間
・厚岸~糸魚沢
・別当賀~落石
◆日本最東端の駅「東根室」の停車時間を2分に延長
◆スマホなどで見どころを「音声ガイド」で案内(全列車) スマホやタブレットで無料アプリ「SkyDeskMediaTrek」をダウンロードして、立ち上げると、実施区間で4カ国語(日本語、英語、中国語、韓国語)の音声が自動的に案内。