雲仙地獄巡り 視界を遮る水蒸気と硫黄の匂い、まるで映画の世界
雲仙普賢岳は1990年に噴火した活火山だ。普賢岳からほど近い雲仙温泉には「地獄地帯」と呼ばれる場所があり、地面から水蒸気がごうごうと舞っている。硫黄の匂いも漂う。大量の蒸気が道路を覆って視界を遮ることもあり、米作家スティーブン・キング氏原作の映画「ミスト」の1シーンを想起させる。「雲仙地獄」を巡った。
気温氷点下
集合時間は午前8時だった。早い。しかも寒い。気温は氷点下だ。標高約800メートル。吐く息が白い。
ガイドをしてくれるのは観光ガイド「さるふぁ」の代表・佐々木雅久さん。業務的に年齢を尋ねると「幾つに見えます~?」と陽気に返ってきた。若い女じゃあるまいし、早く答えて下さいよと心の中でツッコんでいると「50です」と明かしてくれた。
佐々木さんの案内に従って歩を進めた。泉源と宿泊施設を結ぶパイプ類が縦横無尽に通っている。佐々木さんによると、雲仙温泉では宿泊施設ごとに泉源が異なる。泉質は同じだが色が白濁していたり、透明だったり、緑がかっているものもあるという。
散歩道抜けると…
硫黄の匂いがするなか、木々に覆われた散歩道を抜けると水蒸気が地面から湧き上がっている地点に着いた。まるで地下の地獄が燃え盛って煙が噴き出しているかのように見える。名は「邪見地獄」。
佐々木さんによると、ここの泉源から湧き上がる温泉をそのまま飲むと嫉妬心がなくなるとの言い伝えがあるという。しかし、温度は98度前後。飲むことはできない。しかも、もうもうと噴き上がる蒸気も同じくらいの温度で近づくことすら容易ではない。
佐々木さんは「嫉妬を消そうとしてもその前に命が消えてしまいます。逆に言うと、死ななければ嫉妬は消えないということですね」と人間の業の深さを鋭く表現。参加者から「うまい!」との声が飛んだ。
次はナイトツアー
続いて「大叫喚地獄」にたどり着いた。「大叫喚」との名が付いたのは理由があり、「夜には女性の声が聞こえるんです。本当に」と佐々木さんが説明した。蒸気で遮られた向こう側に地獄の入り口があると考えられてきた。そこから夜な夜な女性の苦しむような声が聞こえるという。佐々木さんは「昼はそうでもないんですけど、ナイトツアーだと本当に聞こえるんです。ナイトツアー大人気です」と力説した。
次回は夜の地獄巡りに参加しないと。(林 大造)