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【ヴィクトリアM】種牡馬としても輝き放つキズナ 産駒コンクシェルがG1初制覇に挑戦

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 「ヴィクトリアマイル・G1」(12日、東京)

 チャレンジング・スピリットを掲げるノースヒルズ。今週は中山牝馬S覇者コンクシェルがヴィクトリアMでG1初制覇を目指す。その父キズナは13年ダービーを制し、世代の頂点に立った駿馬だった。種牡馬となっても、皐月賞馬ジャスティンミラノなどG15勝を含むJRA重賞29勝と活躍馬を数多く輩出。関係者の証言を基に、競走馬としても種牡馬としても輝きを放つキズナと、大一番に挑戦するその娘コンクシェルに迫った。

  ◇  ◇

 日本競馬界の“レジェンド”武豊にとって、キズナは特別な存在だった。10年3月、毎日杯での落馬事故で大ケガを負うと、復帰後はなかなか思うように結果を残せず、「個人的に11年、12年はしんどい時期でした」と振り返る。そこで再浮上のきっかけをつくったのがキズナだった。

 「キズナのおかげで踏ん張ることができたと思います。僕自身、苦しい時期にああいう馬に乗せてもらって、前田代表には本当に感謝しています。自分の火が消えかかっていたところでもう一度、スイッチを入れてもらった感じでした」

 出会いは12年12月のラジオNIKKEI杯2歳S。新馬戦-黄菊賞で騎乗していた佐藤哲三元騎手がケガで乗れず、手綱が回ってきた。「バトンを受け取らなきゃな、と」。コンビを組んで2戦は結果が出せなかったが、「馬の特徴をつかみ切れなかった」とユタカ。「毎日杯から自分の考えで思いっきり乗ると、いい方に出ましたね」。1番人気に支持されたダービーでは自慢の末脚を遺憾なく発揮し、外からライバルを一蹴。「迷いなく乗れました。レース後はファンの方から『おかえり』と言っていただき、『帰ってきました』という言葉が自然と出ましたね」と、完全復活の瞬間を思い返した。

 産駒のジャスティンミラノが皐月賞を制すなど、種牡馬としても日本競馬界で存在感を示し続けるキズナ。「ディープらしさもあったし、そうでないところもありました。これだけ活躍できる馬をたくさん出せるということは想像できましたよ」と名手も納得の活躍ぶり。ノースヒルズゆかりのダービー馬は、現役を引退してもなお一線級で輝き続ける。

  ◇  ◇

 出会いは突然だった。佐々木師が預かる予定だった桜花賞馬ファレノプシスの子が不受胎になり、オーナーが預託を決めたのはファレノプシスの半弟。父はディープインパクト。母キャットクイルの8番子だ。

 「びっくりした。世の中にこんな雰囲気を持った馬がいるんだ、と。オーラをぶちまけていた」。トレーナーが初めて味わう高揚感だった。「前田会長に“ダービー勝てます”って。よほど自信がないと言えないし、それまで言ったこともない」と振り返る。その感覚は正しかった。「1歳の乗り始めのキャンターで一完歩を重要視するけど、着地がすごい短い。バネがすごい。(母父が)ストームキャットで体は重厚でも走りはディープ。オーラは間違っていなかった」。ダイヤの原石はデビュー前から異彩を放っていた。

 デビューから2連勝。続く2戦は取りこぼしたが、軌道修正した重賞で連勝を飾った。「京都新聞杯はダービーの試走だったけど、最後1Fがとんでもない脚。そこからは楽しい2週間だった」と決戦を心待ちにした。

 そして悲願のダービー制覇だ。「後ろから3頭目でも全然気にならなかった。これだけ自信のあった重賞はない。負けるイメージがゼロだから」。1番人気に応えてダービー馬に輝いた。

 種牡馬としての活躍も目覚ましい。キズナ産駒の勝利数、出走数ともトップを数える佐々木師は「スピードがあって、切れがあるから、絶対に成功すると思っていた。皐月賞も騒いだよ。他の厩舎の馬なのに(笑)」と目を細める。ダービー馬が紡ぐ人馬の絆は、これからも続いていく。

  ◇  ◇

 父はキズナ、母ザナとノースヒルズゆかりの血統を持つコンクシェル。昨年は桜花賞、秋華賞に出走して牝馬G1戦線を盛り上げたが、両親から受け継いだ確かな成長力は今まさに満開の時を迎えている。今回が17戦目で3度目のG1挑戦。清水久師も「2歳時から期待していましたが、馬体も充実してたくましくなり、力を出し切れるようになりました」と満を持して大舞台に送り出す。

 手綱を取るのはコンビ2戦2勝、前走の中山牝馬Sで重賞初制覇に導いた岩田望だ。「力をつけていて、強いメンバー相手でもこの馬の先行力は劣らない」と相棒の力を信頼する。レース翌日に行われる牧場開場40周年式典にも出席予定の鞍上は「父からずっとお世話になっているオーナーで、僕も小さい頃からかわいがっていただいています。なんとか結果で恩返しして、いい報告をしたいです」と力を込めた。

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