深見東州氏誘う音楽の桃源郷
2014年10月9日
「秋に燃ゆる国民のコンサート!」(主催・一般財団法人 東京芸術財団)が6日、東京・新国立劇場中劇場で行われ、抽選で招待された1000人を「音楽の桃源郷」に誘(いざな)った。国や自治体の税金で行われる公演ではなく、民間の公益団体が社会貢献で行う無料コンサート。抽選に漏れた人や遠方に住む人のため、動画共有サービス「Ustream」を使い、無料で全国にもライブ中継され、7947人が視聴した。今回は、主催者でもあり、日本屈指の実力派オペラ歌手と評される深見東州氏と、バスのコナル・コード、ソプラノの大貫裕子、テノールのジョン・ロングミュアーがソリストとして出演。「ローマ法王謁見コンサート」を行った「アルプス合唱団」も参加し「国民が聞きたいと思う、国民的名曲」で、秋の宴(うたげ)を演出した。
アンコール曲に、魂が揺さぶられ、陶酔した。曲が終わっても、いつまでも称賛の拍手が鳴りやまなかった。スタンディング・オベーション、そして称賛の声が場内に反響した。耳に痛いが、心地よい音だった。
台風一過の青空のように澄み渡った、深見氏の透き通ったバリトンの旋律に、コナル・コードの口から発せられたバスの音色、さらに大貫裕子のソプラノがかぶさっていく。そのハーモニーに、ジョン・ロングミュアーのテノールが加わる。
日本人に親しまれてきた唱歌「ふるさと」も、4人の実力派アーティストにかかれば「至上の芸術」にまで昇華された。「芸術の秋」を楽しもう―と集まった人たちには、これ以上にないプレゼントだった。
アンコールへと導いた、第2部「カルミナ・ブラーナ」の全曲演奏も、体全体に染み渡った。1803年、ドイツ南部の「ベネディクトボイレン修道院」で発見された一冊の古写本。その内容は11~13世紀に書かれた世俗歌謡詩だったが、これに魅せられた、ドイツの作曲家カール・オルフが24編をチョイス。正式題「楽し器伴奏と舞台演技によって補われた、独唱と合唱のための世俗カンタータ~カルミナ・ブラーナ」を作曲し、1937年にフランクフルトで初演した。合唱「おお運命の女神よ」で始まる、20世紀を代表する名曲の数々が、東京・新宿でよみがえった。まさに歴史的な演奏会だった。
深見氏の「君が代」で始まったコンサートは、荘厳だった。日の丸を配した、スカイブルーの服に身を包んだ「アルプス合唱団」の歌が始めから観客を魅了した。設立20年を迎える「アルプス合唱団」の由来は、年会費が1万円弱の9800円だったため。深見氏は「アルプス1万弱(1万尺)ということで始まった」と笑わせたが、今やその実力はアマチュアレベルをはるかに超えている。ひと言ひと言が、意味を持ち観客の心の琴線に触れた。
第1部の「Part2」では、「フィガロの結婚」や「愛の妙薬」、「ナブッコ」といった、なじみの深い曲も披露された。まさに、深見氏のいう「国民が聞きたいと思う、国民的名曲を歌う」コンサートだった。(今野良彦)