村上春樹の素顔に迫る公開インタビュー
2013年5月7日
河合隼雄先生とは20年ぐらい前に米プリンストン大で初めてお会いし、その後あちこちで時間を一緒に過ごした。僕にとっては「河合先生」で、最後までそのスタンスは変わらなかった。小説家と心理療法家というコスチュームを脱ぐことはなく、そういう枠があった方が率直に話ができた。
今でも覚えているのは、先生の駄じゃれ。一種の悪魔払いのようなものだと思っていた。臨床家としてクライアントと向き合い、相手の魂の暗い場所におりていく作業を日々されていた。それは往々にして危険を伴う。帰り道が分からなくなるかもしれない。そういう暗い場所で、糸くずのように体に絡みついてくる闇の気配を振り払うには、くだらない駄じゃれを口にしなければならなかったのではないか。
僕の場合の悪魔払いは、毎日外に出て走ること。それで、絡みついてきた闇の気配をふるい落としてきた気がする。
われわれが共有していたのは物語でいうコンセプトだったと思う。物語というのは人の魂の奥底にある。人の心の一番深い場所にあるから、人と人とを根元でつなぎあわせることができる。僕は小説を書くときにそういう深い場所におりていき、河合先生もクライアントと向かい合うときに深い場所におりていく。そういうことを犬と犬がにおいで分かり合うように、分かり合っていたのではないか。僕がそういう深い共感を抱くことができた相手は河合先生しかいませんでした。それが励ましになり、僕がやってきたことが間違っていなかったと実感できた。
▽インタビュー
〈人間とは。物語とは〉
魂を2階、1階、地下1階、地下2階に分けて考えている。地下1階だけでは、人を引きつけるものは書けないんじゃないか。(ジャズピアニストの)セロニアス・モンクは深いユニークな音を出す。人の魂に響くのは、自分で下に行く通路を見つけたから。本当に何かをつくりたいと思えば、もっと下まで行くしかない。
〈初期作品について〉
「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」などは、店をやりながら書いたので、まとまった物語を書く余裕がなかった。それが新鮮だと評価されたが、僕は先に行かなければならないと思った。村上龍さんの「コインロッカー・ベイビーズ」を読み、こういう書き方をしたいと思い、店をやめた。一日好きなときに書けるのがうれしく、物語を書く喜びにつながった。結末が分からないまま最初の何ページかを書き、うまくできたので、僕はそういうのに向いているのだなと思った。
〈「ねじまき鳥クロニクル」について〉
それまではただ楽しみながら書いていたが、「ねじまき鳥」はもっと世界を広げ、分散させ、分割させる試みだった。記憶、日記、いろんなものをかみ合わせ、重層的な世界をつくろうとした。
〈小説家の仕事〉
(徐々に)魂のネットワークのようなものをつくりたい気持ちが出てきた。みんな自分が主人公の複雑な物語を、魂の中に持っている。それを本当の物語にするには、相対化する必要がある。小説家がやるのは、そのモデルを提供することだ。
誰かが僕の本に共感すると、僕の物語と「あなた」の物語が呼応し、心が共鳴するとネットワークができてくる。僕はそれが物語の力だと思う。
〈読書体験〉
10代は19世紀小説ばかり読んでいた。ドストエフスキー、トルストイ、ディケンズ、バルザック。体に染み込んでいる。物語はなくてはならないものです。1950~70年代、物語小説は差別され、物語というだけでばかにされた。僕は(夏目)漱石のファンだが、漱石も昔は評価が低かった。僕も最初のころはずいぶん批判が多かったが、いつも買ってくれる人がいた。それがずっと続き、ありがたい。
〈新作「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」について〉
「ノルウェイの森」のときは純粋なリアリズム小説を書こうと思った。一度書いておかないと、ひとつ上にいけないと思った。自分では実験的だと書いたものがベストセラーになったのは、うれしかったが、ある種のプレッシャーになった。
前作「1Q84」での大きな意味は、全部三人称で書いたこと。三人称はどこにでも行けるし、誰にでも会える。ドストエフスキーの「悪霊」のような総合小説を書きたかった。(「多崎つくる」は)僕の感覚としては、頭と意識が別々に動いている話。今回は「1Q84」に比べ、文学的後退だと思う人がいるかもしれないが、僕にとっては新しい試みです。
出来事を追うのではなく、意識の流れの中に出来事を置いていく。(多崎の恋人の)沙羅さんが、つくるくん(過去と向き合うため)に名古屋に行きなさいと言うが、同じように僕に書きなさいと言う。彼女が僕も導いている。導かれ何かを体験することで、より自分が強く大きくなっていく感覚がある。読む人の中でもそういう感覚があればいいなと思う。
今回は生身の人間に対する興味がすごく出てきて、ずっと考えているうちに、(登場人物たちが)勝手に動きだしていった。人間と人間のつながりに、強い関心と共感を持つようになった。
(多崎は友人4人との共同体から切り捨てられるが)僕も似たような経験をしたことはあるし、何が人の心を傷つけるのかはだいたい分かる。人はそういう傷を受けて、心をふさいで、時間がたつと少し開いて、ひとつ上に行くことを繰り返しながら成長する。ひとつの成長物語なんです。
僕は自分の小説を読み返して、涙を流すことはない。唯一泣いてしまうのは、小説ではないが(地下鉄サリン事件の被害者や遺族を取材した)「アンダーグラウンド」。殺された方の20代の奥さまの話を聞き、家を出て、電車に乗っている時に涙が出た。1時間ぐらい止まらなかった。
それが、違う話を書いている時にもよみがえってくる。あの本を書いたことは、僕にとって大きな体験だった。
小説を書き始めた29、30歳のころは、書きたいけど書けないことがいっぱいあった。書けることを少しずつ増やし、だいたい書きたいことが書けると思えたのは2000年ぐらい。(今作も)単純に書けるようになったから、書こうと思ったのかもしれない。
〈音楽について〉
朝早く起きて午前中に仕事をし、昼は翻訳をするが、朝はだいたいクラシックを聴く。夜寝る前に、翌朝に聴くレコードを用意するんです。遠足に行く子供のように。
仕事に集中しているので真剣には聴いていないが、音楽に励まされて書いている気がする。20代のころは店をやり、朝から晩までジャズを聴いた。自分の中にリズムが染み込んでいる。文章もそのリズムを使って書く。
僕の本を読んで泣きましたと言う人がときどきいるけど、僕は笑いが止まらなかったと言われる方がうれしい。悲しみは個人的なところに密接につながっているが、笑いは関係ない。やっぱりユーモアの感覚が好き。書くときはなるべくユーモアをちりばめたい。
▽事前に寄せられた質問への回答
〈ランニングについて〉
年を取ると体力が落ちる。若いころは少しでも速く走りたかったが、今は年をとっても走れるようにしたい。80歳、85歳までフルマラソンを走れればいいなと思う。
〈子供のころの読書について〉
小3まで本を読まず、小4から急に読み出した。父と母が国文学をやっていたので、僕はそれから逃げたくて、外国の文学ばかり読んだ。大学に入ってから日本文学も読んだ。漱石、谷崎(潤一郎)…。文章のうまい人が好き。
〈翻訳について〉
翻訳しやすい小説と、難しい小説がある。物語が強いと翻訳しやすい。濃密な描写があると難しい。
〈最後に〉
本当にうれしいのは、待って買ってくれる読者がいること。「今回はつまらない、がっかりした。次も買います」みたいな人が大好きです。つまらないと思ってもらってもけっこう。僕自身は一生懸命書いているが、好みに合わないことはもちろんある。ただ、理解してほしいのは、本当に手抜きなしに書いている。もし今回の小説が合わないとしても、村上は一生懸命やっていると考えてもらえるとすごくうれしい。
(『公開インタビュー』では、報道陣による撮影や録音を禁止し、会場からの質問も受け付けなかった)
芸能ニュース
- 「Aスタ」アンガールズ山根の美人妻が現れ騒然 鶴瓶「奥さん綺麗」に山根も「めちゃくちゃ美人」 ネットも「後ろ姿からして綺麗」「すっごいオシャレ」(4月12日)
- ≠ME冨田菜々風「今までのイメージを覆す」新シングルもう一つの表題曲解禁(4月12日)
- 3月にNHK退局の中川安奈アナ フリー転身後初収録はフジの超人気番組「夢みたいな気持ちで」(4月11日)
- 「逃げ恥」から9年 新垣結衣&星野源のキュン場面TV放送→ネット祭り「ありえないくらい可愛い」「まさかこの後に結婚」「このショートボブにしたい」「めちゃ萌える」(4月11日)
- 大人気グラドル所属のアイドルグループ 解散を電撃発表「心よりお詫び申し上げます」(4月11日)
- AKB48正鋳真優、初写真集発売決定 研究生水着グラビアデビューから約2年(4月11日)
- ジェネレーソンズ 公演にまさか「本物」GENERATIONS白濱・中務が現れ「パクられてる」 会場悲鳴&爆笑(4月11日)
- 広末涼子容疑者の元夫「子供たちへの影響を考えてほしい」メディアやSNSに求める 「聖人」報道は取り下げを「差別用語とすら感じる」(4月11日)
- 「お金配りの張本人」前澤友作氏、政府の給付金に嘆息「毎度配り続けても根本は何も変わらない」(4月11日)
- 吉村洋文知事「万博」批判ネガティブ報道→「特に東京のメディアが徹底的に」 万博幼児トイレ批判にも(4月11日)
- 中性脂肪で肝臓周りが「人の5倍」 ぽっちゃり女性芸人が父と大げんか「このままだと死ぬぞ!」(4月11日)
- アンジュルム・上國料萌衣のラスト写真集「kamiko」が6・6に発売「宝物のような一冊」 6・18卒業公演(4月11日)
- 広末涼子容疑者がゲスト出演予定の音楽イベントが中止に 主催者「諸般の事情により」と説明(4月11日)
- 大河「べらぼう」一番嫌われてる人気キャラ 元気なくなり心配 安永8年、去り際もムカつくのか? 予告で「見くびるな!」(4月11日)
- 抜群の安定感?竹財輝之助がまたも不倫夫役 “全夫が震える”シリーズ登場でネット「また竹財」(4月11日)
- 火9「人事の人見」END制作協力に今話題企業の名前が ネット沸く「うちの会社も」「協力してんのか!」「時代やなあ」「使われたらもう無理」(4月11日)
- 「あんぱん」子役時代終了 涙誘った嵩役の木村優来は「200人の中から満場一致」の逸材(4月11日)
- 「禁断の書」とろサーモン久保田の初自叙伝「慟哭の冠」発売1カ月で重版3刷決定 5月に大阪でイベントも(4月11日)
- 山田洋次監督もビックリ 「男はつらいよ」の主人公・寅次郎と名付けられた彗星が展示(4月11日)
- 「あんぱん」に隠された衣装の秘密 ヒロイン3姉妹のイメージキャラが明らかに(4月11日)
- 近藤真彦 ミュージカル界の大御所のWキャストに恐縮「自信をなくしてしまう」(4月11日)
- 勝地涼、元妻・前田敦子のAKBのMVに「なんかきますよね、そりゃあ」からの謎の口パク(4月11日)
- 女優みたい「ケンミンSHOW」ブレーク中の美人芸人が現れ騒然「可愛いなぁ」交際したい女芸人1位「ついにケンミンに」「出てきた」「山形なんだ」(4月11日)
- ノンスタ井上「彼女が途切れたことはない」発言にスタジオ女性陣「証拠がない!」の猛抗議(4月11日)
- 「アメトーク」小物MC芸人たちが絶賛する意外アイドルの名前 共演者にいると最強 澤部&長田が「コメントがマジ100点」単調番組を盛り上げてくれる(4月11日)
- 純烈リーダー酒井 早くも岩永の復帰を期待「だって、役者さんって難しいやん」 3人体制で初の全国ツアー開幕(4月11日)
- モグライダー芝「今なら大問題」小学校がド級のスパルタ 服脱いで不動で校長を待ち、くしゃみで怒られ 令和では考えられない衝撃の風習(4月11日)
- 「春馬くんが」「春馬くんより」…鈴木亮平&JUJUが「あさイチ」でさりげなく ファンじわり(4月11日)
- 【全文】仲里依紗 アミューズからの独立を発表「これからは個人として、新しいことにもどんどんチャレンジしていきたい」(4月11日)
- ハライチ澤部 「ぽかぽか」ゲストがなかなか決まらない問題を告白 ノブ「古のタレント名鑑」(4月11日)
- 人気女芸人が“大暴走”「てめえ、おい!」 東京ホテイソン・たける投げ飛ばす 麒麟・川島「朝の歌舞伎町になってる!」(4月11日)
- 三浦大知 アリーナ公演半分売れ残りの赤裸々告白の真意説明 来場者が「あれ?」だけは「キツい」(4月11日)
- 西川きよし 長年続けるあしなが学生募金活動に参加「目玉の恩返しですわ」(4月11日)
- 現役女子大生がnon-no専属モデルに決定 加藤栞に「華やかでヘルシー」編集長も太鼓判 6月号から登場(4月11日)
- 92歳現役バレリーナ 70年以上不変の朝食を公開 【推しの子】作者も絶賛(4月11日)
- 田崎史郎氏 石破首相指名の日米の交渉役をバッサリ「厳しい厳しい交渉担えるのか?」 最適な人物2人の実名も告白(4月11日)
- 豊田真由子氏、母校の名門女子校を語る タワマン隣接問題で「お外が見えないのはキツい」(4月11日)
- 千鳥・大悟、18歳インフルエンサーに図星ひと言「まだ何者でもないってこと?」(4月11日)
- V系「DIR EN GREY」5年半ぶりアメリカ単独公演で観客が熱狂「ものすごい盛り上がり」(4月11日)
- 桜井ユキ主演のNHKドラマ NHKプラス視聴数が「大河、朝ドラ除くNHKドラマ史上最高数字」に(4月11日)
- 「ダウンタウンDX」代打MCたちが悩む浜田の“魂” 千鳥大悟もかまいたち濱家も「どう使う?」(4月11日)
- 「ぽかぽか」32歳美人女優登場に騒然「めっちゃ綺麗な人と思ったら…」「こんなに美人だった?」 やめて人生ラクになったこと告白(4月11日)
- ハライチの澤部 共演者の「ぽかぽか」イジリに激怒「何かバカにしてるな!」 千鳥・ノブ「(ゲストが)いにしえのタレント名鑑」(4月11日)
- 愛猫家・佐久間大介が“猫ポーズで”おねだり「お願いしにゃん!」 トーク止まらず「うちの子かわいくてしょうがない」(4月11日)
- 若狭弁護士 広末容疑者の危険運転致傷による家宅捜索は「例としては少ない」も「薬物の疑いがあるので、辛うじて捜索が可能」(4月11日)