サリーとジュリーの絆を象徴する曲とは
2014年2月21日
東京ドームでの最終公演(12月27日)後の「打ち上げ」にも触れていた。メンバーが1人ずつ帰り、最後に残ったメンバーが沢田と岸部だったという。「どないしょ?」というジュリーに、サリーは「いこか」。2人はスタッフとともに二次会へ。沢田は「ちなみに次の日も一緒でした(笑)」と、岸部と“連チャン”で酒席をともにしたことを明かす。「僕より2つ上ですよ、元気やわぁ。サリーはえらい!」。ジュリーとサリーの絆の深さを実感させられた。
そういえば、沢田が主演した75年のTBS系ドラマ「悪魔のようなあいつ」が再結成ツアーのあった昨年12月にCSで再放送されていた。役者に転向したばかりの岸部はこの連続ドラマの途中から登場する。個人的には、「友を後押ししたい」という沢田の思いも、このキャスティングに反映されていたのではないかと思っている。ドラマの主題歌は、阿久悠作詞、大野克夫作曲の「時の過ぎゆくままに」。岸部(当時は修三、翌年から一徳に改名)にとっては、プロのベーシストとして弾いた最後の曲だった。
それから40年目。沢田は岸部を客席に迎えたライブで「時の過ぎゆくままに」を熱唱したが、実はその曲、構成上は浮いていたのだ。憲法9条を守りたいという願いを込め、その行く末を憂えるバラード「我が窮状」(※9条を窮状にかけている)や、福島からの目線で脱原発を訴える「F・A・P・P」(フクシマ・アトミック・パワー・プラント)といった、近年、日本の現状への危機感を持って書き上げた自作詞の曲を含むレパートリーが続いた本編中、誰もが知る往年のヒット曲で唯一歌われたのが「時の過ぎゆくままに」だった。
「ヒット曲も歌わんと、こむずかしい歌ばっかりで。みなさんの気が休まるのは『時の過ぎゆくままに』くらいでしょうか?いや、むしろ『それやるの!?』みたいな雰囲気もありますが…。いや、やるんですけどね!」。ジュリーの「でも、やるんだよ」宣言。サリーはどんな思いで「時の過ぎゆくままに」を聴いていただろうか。この曲には濃密な2人の歴史が詰まっている。
沢田は3月27日から5月24日まで、東京を皮切りに、北九州、大阪、広島、栃木、名古屋、札幌で毎春恒例の音楽劇に臨む。今年の演目は「悪名」。勝新太郎が田宮二郎との名コンビで大ヒットした映画シリーズを下敷きにした舞台で、沢田は勝の当たり役“八尾の朝吉”を演じる。あの日のMCではこんな言葉も飛び出した。「新聞読んでたら、勝新さん(の記事)が出ていて、あの人は65歳で亡くなったんですね。(今の自分と同じ)65やて…。自分も、いつ死んでもおかしない年なんですよ。止まった時が最後やと」。
止まった時が最後‐。ジュリーの覚悟を示す言葉だった。そして、客席のサリーも“うん”と心の中でつぶやいた、ような気がした。=敬称略(デイリースポーツ・北村泰介)