松坂から4安打の小兵・田中一徳さん、大先輩・桑田真澄氏の教え胸に球界に恩返し

田中一徳氏
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 日本中の注目を集めた激闘から今年で20年が経つ。1998年夏の甲子園準々決勝。PL学園は、松坂大輔投手(37)=中日=を擁する横浜と延長17回を戦い、敗れた。球史に残る試合を演出した1人が、当時2年生外野手でPL学園の1番打者・田中一徳さん(36)だった。

 この試合で松坂から4安打を放って評価を上げ、99年ドラフト1位で横浜(現DeNA)に入団。2008年限りで現役を引退し、16年から福岡県太宰府市の日本経大コーチを務めている。

 同大学のスタッフはプロ経験者がそろう。元日本ハム、西武・行沢久隆監督(64)を、元阪神、西武・吉竹春樹助監督(57)がサポート。ダイエー(現ソフトバンク)、巨人などで活躍した岸川勝也氏(52)がアドバイザーを務める。その中でも若い田中コーチは、グラウンドを動き回り、選手に声をかける。現役時代とは違う穏やかな表情が印象的だ。

 指導者の道に進むまでは苦難の連続だった。松坂から4安打-。この事実は田中氏の“肩書き”としてついて回った。「あれでプロに行かせてもらえたし、マイナスに捉えたことは一度もない」と話した上で、苦しめられた過去を明かした。

 ドラフト1位で横浜に入団後、思うような成績を残せなかった。周囲の心ない言葉が耳にも入った。「横浜はドラフトに失敗した」。結果を出せない自分に責任があることは理解しながらも、身長165センチの体で戦ってきた男の心はすさんだ。

 「現役の時は周囲に『何も知らないくせに、言いたいこと言いやがって』と思う気持ちが強かったし、そう思わないとやってられない世界だった」

 反骨心を支えに、02年は112試合に出場。だが、06年オフに戦力外通告を受けた。現役へのこだわりが強く、07年から米独立リーグに挑戦。ただ、その2年間で熱意も薄れ、08年のトライアウト受験後にユニホームを脱ぐことを決めた。

 引退後の進路には悩んだ。そんな時、PL学園の先輩・桑田真澄氏(49)にかけられた言葉に背中を押された。「野球は“野”という字が現役なら、“球”という字は恩返し。それができて、初めて野球になる」。指導者への転身を決意。都内のベースボールスクールで指導を始め、14年から拓大紅陵(千葉)のコーチに就任した。その後、行沢監督の誘いを受けて今に至る。

 引退から10年以上がたった。今では苦労した分、冷静に周囲を見られるようになった。

「『こういう考えをする人もいるんだ』と何でも受け止められるようになった」。教え子には、人の話を聞くように伝えているという。「自分が経験できるキャパなんて知れているでしょうから」。選手には謙虚な気持ちで向き合い、同じ目線で指導にあたる。

 今も“PL魂”は忘れていない。問題を起こし、16年夏から休部となっている母校の野球部に対して複雑な思いはある。ただ、高校時代での経験は田中氏にとってはかけがえのない財産だ。

 「PLの話をすると、うまく受け取ってもらえないのでつらい部分もある。常識とズレがあると言われるのも分かっているけど、自分が生きてきた人生を否定することも嫌。かといって、肯定もしないけど、やってきたことは間違いじゃないとも思う。だから、僕は人生の中で、PLでの経験をうまく生かしたい。周囲とアジャストして、PLのいいモノは取り入れて、よくないモノは自分の思い出として置いておくべきだと思う」

 将来はプロのコーチや、高校野球の監督に就任する夢を持つ。理想の指導者像とは-。「この選手にはどういう指導をすればいいのかとかを感じ取れるようになりたい。経験を還元しながら、教え子が僕と同じ道を歩みたいと思ってもらえるような指導者になりたい」。松坂から放った4安打を起点に始まった紆余曲折の人生。その過程で得た教訓は、田中氏の礎となっている。(デイリースポーツ・西岡 誠)

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