「Ｗ杯アジア最終予選、日本６‐０ヨルダン」（８日、埼玉）

　２つの感情が入り交じった。「もう少しかっこよく決めたかったんですけどね…」。言葉とは裏腹に、ＦＷ香川の表情には安堵（あんど）感が漂う。最終予選初ゴール。双肩にのし掛かっていた重圧が、少し軽くなった気がした。

　３‐０の前半３５分だ。相手ＧＫのクリアボールを拾ったＤＦ内田からのパス。冷静だった。「相手ＤＦが見えていて、入らないかと思った」という右足シュートは、ＤＦの足先をかすめて左サイドネットへ。何かから解き放たれたように豪快なガッツポーズを見せた。後半途中からは、右足をけいれんが襲った。後半４０分に放ったシュートはポストを直撃。「足がつって、情けない。１点じゃ物足りなかったし、決めないといけないシュートもあった」。反省の弁が口をつくのは、理想の高さゆえだ。

　独・ドルトムントでは２連覇を達成し、今夏からは世界的なメガクラブ、英・マンチェスターＵへ移籍。ドルトムントでの祝賀会では、ドイツ語があまり得意ではないながらも、通訳もいない中で朝日が昇る時間まで、チームメートと共に喜びに浸った。香川に近い関係者は語る。「真司は言葉ができなくても、プレーで自分を認めさせていった」。２年前の南アＷ杯ではメンバー外だった逸材は、今では紛れもなく世界基準の選手だ。

　２連勝で迎える豪州戦。全２６人中、７人が英国でプレーする難敵は、プレミア挑戦を控える香川にとって格好の相手だ。「チームも調子が良い。アウェーの中でどこまでできるか、楽しみです。勝利につながる結果を残せたら」。さらなる高みを目指す日本の至宝が、ザックジャパンを最終予選３連勝に導く。