2023.10.23

小田穂乃実の実になる話⑩「カイバ」ってな～に？

　馬の大切なご飯「カイバ」。レースで力を発揮するためにも必要不可欠なものですが、人にも好き嫌いがあるように、馬一頭一頭それぞれに合うものは異なります。知れば知るほど奥深いカイバについて、厩舎のジムサポートに加え、競走馬のカイバに関してもアドバイスを行っている、カワダレーシングサポートの河田安弘さんにお話を聞かせていただきました。主に渡辺厩舎や藤岡厩舎など６つの厩舎で活躍されています。

　「まず、馬が普段食べているエン麦、配合飼料、サプリメントなどを総じて『カイバ』といいます。エン麦がご飯、配合飼料はおかずのようなイメージですね。配合飼料は製品よって、カロリーや味、目的などが異なります。その中にはチャーハンみたいに、これだけ食べさせれば大丈夫というタイプのものもあります」。それぞれの比率や配合する飼料、サプリメントなどについて厩舎スタッフ一人一人と話し合そうです。

　「体や調教を見て、その時のその馬に対して感じたことを伝えます。前はこういう感じで今回はこう見えるけど、カイバどうしましょうか？と」。日々変化する馬の状態を見極め、その時々に合わせた適当なカイバを配合する必要があります。「人もその時の体調や好き嫌いで、野菜を多くしよう、ご飯を多くしようって思うことがありますよね。馬も嫌いなものが入っていたら、全く食べないこともあります。そうすると、強めの調教ができなかったり、筋肉量を増やしたりすることができません」。

　では、レースに向けてカイバはどのように変化していくのでしょうか？私はとにかくパワーを付けられるような食事を！というようなイメージを抱いていたのですが、「馬にもよりますが、筋肉を増やすと、見た目は良くなりますが、走りが重くなってしまう子もでてきます。だから、レース直前は筋肉量を増やすことよりも、なるべくエネルギーを体に入れられるようにしてあげたいと考えています」とのことでした…。馬は自分が食べられる量以上を無理して食べるようなことはしないので、元々食べられる量でどういう比率にするのか、という工夫がとても大切になってくるようです。

　時には、あまりカイバを食べない馬も。「そういう子には、ビュッフェのようにいろいろな種類のものを用意します。その中でどれがその子に当たるのか、ということを日々探し続けます」。根気のいる作業ですが、とにかく“食べてエネルギーを入れてもらう”ことが大切。「食欲が落ちない馬はタフなんだろうね。ストレスや精神的な弱さから、食べられない子もいるんじゃないかな」とおっしゃっていました。メンタル的な部分からも食欲に影響することがあるのですね。

　馬の食事はレースでのパフォーマンスに直結します。だからこそ、日々の丁寧な食事管理、調整がとても大切なのですね。