【清宮幸太郎伝説】ぶれずに真っすぐ-挫折を経て得た夢への一歩
「日本ハムドラ1清宮幸太郎伝説」
7球団競合の末、日本ハムが早実・清宮幸太郎内野手(18)の交渉権を引き当てた。高校通算111本塁打を放ち、甲子園にも2度出場。高校野球史上空前のフィーバーを巻き起こした大砲が、今度は球界を代表する大砲となる未来に期待が膨らむ。その生い立ち、リトルリーグ時代から数々の伝説を残してきた横顔を連載で紹介する。
◇ ◇
幼少期から結果を残してきた清宮にも、挫折がなかったわけではない。投手としても活躍したリトルリーグ時代に肩を3度痛め、シニア時代からは「投手はもういいかな」と打者に専念。そして、中2の2月にはサッカーのプレー中に腰を痛め、全治6カ月の疲労骨折が判明した。
ただ、そこでもナインの横でリハビリメニューをこなし、ノックの補助など精一杯チームをサポート。試合出場は無理でも、ベンチからいつも声がガラガラになるまで仲間を鼓舞した。
大好きな野球ができない期間があったから「今こうしてやっていける」と振り返っている。調布シニアの安羅岡一樹監督(55)は「謙虚でおごることがない。計り知れない目標があって、そこへぶれずに、まい進できる」と感心する。
その姿勢こそが、清宮の最大の長所ともいえる。シニア卒団時、恩師に贈った寄せ書きには「“甲子園”見に来て下さい!」と記した。わずか4カ月後の高1夏には有言実行。周囲の期待を重圧に感じず、力に変えて応えていく“天賦の才”。高校野球での歩みはその証明だ。
今年6月の招待試合。右翼席の子供たちが初めて「あと1本」コールをした瞬間、高校通算100号を放ってみせた。昨冬、調布シニアのグラウンドに“里帰り”した際は、多くの保護者らで人だかりができる中、フリー打撃でポンポンと特大弾を披露。歓声が大きくなるにつれ、気持ちよさそうに柵越えを連発したという。
安羅岡監督は「お父さんの存在もあるでしょうが、俺はこういう宿命なんだと自覚して生きている。17、18歳の考えることじゃないことを考えている。すごいと思いますよ」と舌を巻く。
9月のプロ志望表明会見で、清宮は「プレーで人を幸せにしたり、感動させたりできるのが、野球選手のあるべき姿だと思う」と志を語った。早実・和泉実監督(56)は「野球に対する純粋さ、誠実さは、入学時から変わらない。変わらないからいい。それが伝わる人間性」と太鼓判を押す。
世界を代表するホームランバッターという夢へ-。天真らんまんな怪物スラッガーは、プロの舞台でもピュアにぶれずに階段を上がっていく。=おわり=
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