検証!リクエスト制度 試合の流れを左右、新たな戦術の切り札に 成功率は37%

 検証の結果、セーフの判定を伝える小林審判員(中央)
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 今季から新たにリプレー検証制度「リクエスト」が導入された。開幕からホームとビジターの対戦が1回りした5月3日で第1クールが終了。日本野球機構(NPB)は7日、セ、パ計163試合で71件(セ34件、パ37件)行われたと発表した。判定が覆ったのは全体の37%の26件だった。試合時間が長引き、間延びするとされてきた問題や現場の反応はどうなのか。勝負どころでは“切り札”にもなり得る新制度。各球団の監督がどう考えているかにも迫った。

 新たなルールは、開幕から頻繁に活用されている。阪神・金本監督は4月18日・中日戦の守備でリクエストの権利を行使して覆らなかったが、同28日・広島戦の攻撃(一回、糸井の二盗を巡る判定)で今季4度目の要求で初成功した。データ集計の対象となった第1クールの計163試合で権利行使は71件、成功事例は26件だった。

 判定がより分かりやすく鮮明になった印象だ。これまでは判定に異議を唱えても、“判断”の主導権は審判にあった。それが「リクエスト」を行使すると映像を確認した上で、より正確なジャッジが下される。ヤクルト・小川監督は「自分たちの主張が通るという機会が設けられた。正確性の面からもいいこと。リクエストによって審判の判定も覆るのが普通の時代になった」と感想を語る。

 当初は試合時間が長くなることが懸念されたが、大きな影響はない。両リーグが発表した平均試合時間は、昨年の同時期との比較でセは2分短くなっており、パも1分長いだけだった。

 球場のファンは行使されたプレーの映像を場内のビジョンで見て、“検証”を疑似体験できる。DeNA・ラミレス監督が「お客さんも映像を見て楽しんでいるし、僕も『アウトだ!』『セーフだ!』と楽しめている」と言う通り、間延びする心配もなさそうだ。

 戦術面は新制度の導入によって明らかに変わった。権利を行使する場合、1試合において九回までの場合は「2回」(判定が覆った場合、回数は減らない)。終盤など重要な場面まで最低でも1回の権利は大事に取っておくか、積極的に使って局面を変えにいくのか-。この点がキーポイントだと感じる。

 「流れを変えることができる。いろんな場面で使える。明らかに(判定が)分かっていても、チームの流れを見て使っていきたい」とはロッテ・井口監督。4月26日・オリックス戦で2回の権利を使い切った日本ハム・栗山監督は「リクエストしておけば、というふうに後で絶対思わないように。前に進もうというだけの話」と説明した。つまり、要求するタイミングと回数が“肝”なのだ。

 DeNAも“好機”を見極めて活用した。4月13日の中日戦。初回の攻撃で先頭・神里が二ゴロを打ち、際どいタイミングで一塁アウトになった。「神里が塁に出れば盗塁もできて、得点の可能性も高まる」とリクエスト。結果は覆らなかったが、好投手の小笠原を相手に接戦を想定し、迷いなく“カード”を切った。ラミレス監督は「いい制度だと思っているよ。オプションが増えるのはいいことだ」と力説する。

 リクエストの権利を持っているのは監督だけだ。将の観察力、判断力や決断力がものをいう。勝負どころで効果的に使えば、戦術の新たなオプション、そして“切り札”にもなり得る。新制度が今後のペナントレースの行方も左右するかもしれないと感じている。

(デイリースポーツ・伊藤玄門)

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