ヤクルト・川端 カムバック果たした裏側 6年前の“忘れ物”
デイリースポーツの記者が今年を振り返る企画「番記者ワイドEYE」は、日本一を決めたヤクルト・川端慎吾内野手(34)がカムバックを果たした裏側に迫る。苦しみ続けた2年間で頻繁に見た夢とは-。ヤクルト担当の松井美里記者(30)が、代打の神様の素顔を暴く。
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涙が止まらなかった。苦しみ、悔しさが全て報われた11月27日、神戸の夜。川端が放った一打は、チームに歓喜と大粒の涙をもたらした。「ずーっと準備をしていて、1番いい場面でいい結果が残せて本当によかった」。ケガを乗り越えて、帰ってきた瞬間だった。
実働時間は、1試合のうちのわずか。それでも川端の準備はものすごく早くから始まる。シーズン中、全体練習の取材に向かっていた私は、すでに練習を終えて汗だくの川端を何度も見かけてきた。「あんな思いはもう絶対したくないと思って打席に入っていた」。働けなかった2年間が、日本一への扉をこじ開けた。
15年リーグ制覇の瞬間、川端はレギュラー選手だった。打率・336で首位打者を獲得。天才的なバットコントロールで195安打と最多安打にも輝き、何度も打線の起点となった。それでも17年、腰痛に悩まされ、ヘルニアの手術を決断。その後も状態が上向かず、20年にもう一度手術を受けることになる。
19年、20年は川端にとって苦難の2年間だった。ケガに泣き、なかなか上がらない状態にもがき苦しみ続けた時間。そんな日々の中で、川端は頻繁に夢を見ていたという。「来年ダメだったら…と、寝る前に考えるのはそういうことばかりで。自分が引退試合をしているんです、夢で。打っているシーンはない。いつもスピーチしていました」。今だからこそ、笑って明かせる話でもあった。
6年前の“忘れ物”を、当時とは違った形でつかんだ。今季は先発で出場した試合はない。それでも「代打の神様」として、代打安打数30は堂々のプロ野球記録2位の数字だ。そして11月27日。3勝2敗で迎えた日本シリーズ第6戦、延長十二回に代打で登場すると、日本一を決める決勝の適時打を放った。
何度もチームを救ってきた男のバットで決まった悲願の日本一。川端は激動の1年をこう、振り返る。「シーズン最初の方は正直、チームのことを考える余裕もなかった。1本1本、ヒットを打つ度に自信は戻っていきました」。プロ16年目で開いた新境地。新たな居場所を見つけ、川端の逆襲はまたここから、始まっていくのだろう。
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