伊調、東京五輪目指す 17年ぶり国内で敗北…対日本勢70連勝でストップも

 「レスリング・全日本選手権」(22日、駒沢体育館)

 19年世界選手権代表選考会を兼ねて行われ、女子57キロ級の1次リーグ初戦で五輪4連覇の伊調馨(34)=ALSOK=と、リオデジャネイロ五輪63キロ級金メダルの川井梨紗子(24)=ジャパンビバレッジ=が対戦し、川井梨が2-1で勝利した。伊調が国内で敗れるのは01年全日本女子選手権の吉田沙保里戦以来17年ぶりで、対日本勢70連勝で止まった。2人は準決勝を勝ち上がり、23日の決勝での再戦が決まった。同50キロ級ではリオ五輪48キロ級金メダルの登坂絵莉(東新住建)が準決勝で敗退。世界選手権53キロ級Vの奥野春菜(至学館大)は体調不良で棄権した。男子グレコローマンスタイル60キロ級は昨年の世界選手権覇者の文田健一郎(ミキハウス)が決勝に進んだ。

 伊調が17年ぶりに日本選手に負けた-。その事実は十分歴史的な“事件”だが、相手は現役最強女王とあって想定内。むしろ10月に実戦復帰したばかりの伊調自身にとって確かな手応えが残った。

 「五輪に向けての本当の復帰戦として全日本選手権があった。自分の中でもっと(状態を)上げたいという気持ちがある。ここからが本当の勝負の時だと思う」。試合後に日本協会を通じて発表したコメントで、これまでは明言していなかった東京五輪挑戦への意欲を初めて明かした。

 日本初となった五輪女王対決は、再戦を見越して手の内を探り合ったのか両者ともに攻撃を仕掛けず、パッシブ(消極性に対する罰則)のポイント差で雌雄を決した。完全決着とは言いがたい内容となったが、指導する田南部コーチの目には好意的に映った。「今は(全盛期に比べて)7割」と明かした上で「こんなに接戦をするとは」と手応えを強調。「今の状態でこれなら何とかなるかな。半年後にはリオ五輪の時くらい(状態を)戻したい」と代表争いが佳境を迎える来年6月の全日本選抜選手権に向けて展望を明るくした。

 伊調もパワハラ問題の影響などで失っていた試合勘を徐々に取り戻すかのように尻上がりの戦いを見せた。2試合目は返し技や片足タックルでポイントを奪うと、準決勝も勝負所で片足タックルを決めて完封勝利。「自分の中で気持ちも技も体力も上がってきていることがわかった」。慣れ親しんだマット上で心技体の充実を確かめた女王は、川井梨への雪辱も懸かる頂上決戦を前に「(来年6月に向けて)たくさん収穫があればいい」と完全復活への序章と位置づけた。

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