宇良 先手許すも魔法かけた幕内100勝 「もうちょっと早く到達したかった気持ちはある」
「大相撲初場所・9日目」(16日、両国国技館)
平幕宇良が錦富士をはたき込みで破り、6日目から4連勝で6勝目。業師が相手に触れずに勝負を決める独特の取り口で、区切りとなる幕内100勝目をマークした。大関貴景勝は佐田の海を退けて勝ち越し、1敗を守り単独トップ。関脇豊昇龍は小結若元春に敗れて3敗目を喫した。1敗でトップに並んでいた琴勝峰は平戸海に敗れて2敗に後退した。
やっぱり会場を沸かせるのはこの男だ。宇良は立ち合いで踏み込まれて先手を許したものの、右に回り込みながら勝機を探っていく。激しい攻防が続いたが、最後は宇良がかがんで突きを回避すると、錦富士は足を後ろに滑らせてバランスを崩し、懸命に踏ん張る体勢になった。
すると宇良は腕を真っすぐに伸ばし、錦富士の頭上で手指をヒラヒラ。すると魔法にかけられたかのように腹からバタンと倒れ込んだ。決まり手ははたきこみだったが、相手に触れずに勝負を決めるまるで“空気投げ”。「激しい相撲でした。はたきの動き?分からないです」といつもの口調で振り返ったが、久々に異能力士らしいアクロバチックな相撲に館内が一気に盛り上がった。
この白星で節目の幕内通算100勝を達成。「よく頑張ったと思います」と喜びつつ、「もうちょっと早く到達したかった気持ちはあります」とポツリ。それでも右膝の大けがで一時は序二段まで転落し、約3年半ぶりに21年名古屋場所に再入幕を果たしてからは順調に白星を積み重ねている。
けがを機に自分の取り口を見直し、現在は148キロまで増量。体の重みを生かして前に出る相撲の新境地を開き、今場所は6勝中4勝が押し出しと寄り切り。「まだまだ伸びしろはあります」と正攻法の取り口に手応えを感じている。「元気な相撲を取れるように頑張ります」とまずは勝ち越しへ全力を傾ける。変幻自在の魔術師が、初場所をさらに盛り上げていく。