安青錦 獅司との幕内初ウクライナ出身対決制す 角界導いてくれた関大OB山中さんに感謝星

 獅司(右)を押し倒す安青錦
 獅司(右)と安青錦(撮影・山口登)
 母校・関西大学の校章があつらわれた化粧まわしを締め土俵入りする安青錦=9日
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 「大相撲春場所・6日目」(14日、エディオンアリーナ大阪)

 幕内では初となるウクライナ出身力士の対戦が実現した。新入幕の安青錦が獅司との同郷対決を押し倒しで制し、3勝3敗とした。母国からの避難先として縁のある大阪で、さらなる飛躍を狙う。5日目に金星を配給した新横綱の豊昇龍は平幕翔猿をどっしりと寄り切って連敗回避の2敗をキープ。大関陣は大の里が1敗を守る盤石ぶりを見せ、かど番の琴桜も3敗を死守して星を五分に戻した。トップの1敗に大の里と高安、阿武剋、美ノ海の平幕3人が並ぶ。

 戦火に揺れる故郷から大相撲の世界にやって来た、安青錦と獅司。初場所の十両での対戦では獅司に軍配が上がったが、安青錦は「負けてもいいから自分から動く」。頭から低く当たって自ら流れをつくると、左上手を切られてもお構いなしに豪快な押しで吹っ飛ばす。7学年上の母国の先輩に雪辱を果たした。

 初日の土俵入りでは、昨年11月に関大相撲部から贈られた、紫紺に校章があつらわれた化粧まわしを締めた。会場で観戦した同相撲部OBの山中新大さんは「新入幕の大阪で関大の化粧まわし姿を見られてうれしい」と感慨に浸った。

 山中さんは2019年、大阪府堺市で開かれた相撲の世界ジュニア選手権にウクライナ代表として来日した安青錦と知り合った。大会後はSNSを通じて交流していたが、22年2月にロシアのウクライナ侵攻が発生。大相撲への夢を語り、日本への避難を希望した安青錦を同年4月に神戸市内の自宅に受け入れ、関大でともに稽古を行った。しこ名の下の名前「新大」は山中さんにゆかりを持つ。

 山中さんが安青錦との対戦を待ちわびる力士がいる。関学大出身の宇良だ。両校は体育会運動部の対抗戦「関関戦」を毎年初夏ごろに開催。山中さんは「幕内で“関関戦”が実現したら面白い」と対戦を楽しみにする。

 新入幕の目標とする2桁勝利と三賞獲得へ、可能性を残す3敗をキープした安青錦。夏場所にはドイツに避難した両親を国技館へ呼ぶ計画が進行中とあって、負けられない。「自分の相撲を取るだけ。勝負なのでいい日もあるし、悪い日もある」と中盤戦を見据え、青い瞳に静かな闘志の炎を宿した。

 ◆安青錦 新大(あおにしき・あらた) 本名ダニーロ・ヤブグシシン。2004年3月23日、ウクライナ・ヴィンニツャ州出身。7歳から相撲を始め、レスリングも並行して経験。19年の世界ジュニア相撲選手権では3位。ロシアのウクライナ侵攻を受けて22年4月に来日し、12月に安治川部屋に入門。23年秋場所で初土俵。24年九州場所は所要7場所のスピード出世で新十両となると、25年初場所でも大きく勝ち越し春場所での新入幕を決めた。182センチ、136キロ。

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