山部攻めて逆転V 初の五輪代表に選出
「柔道・全日本女子選手権」(17日、横浜文化体育館)
リオデジャネイロ五輪女子78キロ超級代表の最終選考会を兼ねて、無差別で行われた。3年連続の顔合わせとなった決勝は、山部佳苗(25)=ミキハウス=が最有力候補の田知本愛(27)=ALSOK=に技ありからの押さえ込みで、合わせ技一本勝ち。2年ぶり3度目の優勝で、2週間前の全日本選抜体重別に続いて連勝した。山部はその後の強化委員会を経て、逆転で初の五輪代表に選出された。
リオへのラストチャンスを“立ち合い”で制した。山部は、決勝で始めの合図と同時に猛突進。「ガンガン前に出るしかない、絶対に下がらない、と。昨年の決勝は一歩勇気が出なくて負けた。4年間やってきたすべてを出そうと思った」。前面に押し出した気迫が、奇跡の大逆転劇を生んだ。
崖っぷちからはい上がるには、鬼になるしかなかった。残り1分を切り、左膝を負傷した田知本を攻め立てた。最後は体当たりのような浮き落としから、押さえ込み。宿敵から、喉から手が出るほど欲しかった「一本」をついに奪い取った。
闘志に火をつけたのは、不調から復活した同い年のアスリートだった。今月6日に観戦した競泳の日本選手権。山梨学院大の同級生で同じ所属先の鈴木聡美が、前半からの積極的なレースでリオ切符をつかみ取った。「入場の時から一人だけ表情の本気度が違った。攻める勇気をもらった」と山部。自身に足りなかった最後のピースを見つけた。
12、14年と全日本を制し、リオ五輪代表争いに名乗りを挙げながら、国際大会では田知本に差をつけられた。最大の弱点は気持ちの弱さ。「畳に上がるのが怖かった。でも誰にも言えなかった」。今年2月のグランドスラム・パリ大会では初戦で敗退し、リオ行きに黄信号。そこから今月の全日本選抜体重別を制し、ラストチャンスをものにした。
「この優勝をきっかけに自信を取り戻せた。リオ五輪では金メダルを目指す」。もう後ずさりはしない。