東京五輪に暗雲…汚染水問題説明不十分
2020年夏季五輪開催を目指す東京招致委員会が4日、国際オリンピック委員会(IOC)総会が開かれるブエノスアイレスで初の記者会見を開いたが、外国メディアからは東京電力福島第1原発の汚染水漏れ問題に対する説明が不十分だと不満が相次いだ。政府が3日に決めた国費470億円をつぎ込む基本方針は詳しく紹介されず、関係者からは「マドリードに風が吹いている」と危機感も出始めた。
招致委の会見では日本語で会話できる小型ロボットを紹介するなど、日本の技術力の高さをアピールした。ところが、質疑応答に移ると、福島第1原発の汚染水漏れに質問は集中。冒頭から竹田恒和理事長に対して「IOC委員に汚染水漏れに関する手紙を送ったそうだが影響を懸念しているのか」との質問が出た。
竹田理事長は「東京は水、食物、空気についても非常に安全なレベル。全く懸念はない」などと回答。その後も「東京には放射線の問題が唯一の懸念材料だが、状況をもう少し詳しく教えてほしい」など、質問六つのうち四つが汚染水漏れ関連だった。同理事長は「福島とは250キロ離れている。東京は安全」と同様の答えを繰り返し、不安払拭(ふっしょく)に追われた。
質問したある記者は「疑問に答えていない。証拠としてデータを示すべきだ。何かを隠しているように感じる」と指摘。五輪専門サイトの英国人編集長、ダンカン・マッカイ氏は「IOC委員の中には東京ではなく福島の状況を問題視している人がいる。それに十分言及せずに支援は得られないのでは」と厳しい見方を示した。
福島第1原発の汚染水漏えいについて、ブエノスアイレス入りしたあるIOC幹部は「汚染水漏れ問題の影響は非常に大きい。マドリードがかなり巻き返している」と指摘した。
やや優位に終盤を迎えた東京だったが、招致委内部からも「政府の対応を説明できるように準備すべきだった」との声が漏れるなど、苦境に立たされはじめた。