不器用な男の勲章だ。政府は２５日、２０１３年度の文化勲章を、日本を代表する映画スターの高倉健（８２）、日本文学・比較文学の中西進（８４）、医化学・分子免疫学の本庶佑（７１）、電子工学の岩崎俊一（８７）、書家の高木聖鶴（９０）の各氏に贈ることを決めた。文化勲章の親授式は１１月３日に皇居で開かれる。歌舞伎以外の俳優の受章は、１９９１年の故森繁久弥さん、２０００年の故山田五十鈴さん、２００５年の故森光子さんに続き４人目となる。

　健さんは「映画俳優・高倉健を支えてくださった多くの方々に、深謝申し上げます。どうもありがとうございました」と、健さんらしく喜びよりも周囲への感謝を示した。

　「映画俳優として５８年、２０５本の映画に出演させていただきました」と振り返ったように、ほぼ映画一筋に歩んできた。

　健さんは１９３１年、福岡県出身。６０年代、「網走番外地」「昭和残侠伝」「日本侠客（きょうかく）伝」の３シリーズをはじめとする東映の任侠（にんきょう）映画でスーパースターの座に上り詰めた。東映を退社後は「幸福の黄色いハンカチ」（７７年）「駅　ＳＴＡＴＩＯＮ」（８１年）など、数々の名作に主演した。

　「ザ・ヤクザ」（７４年）「ブラック・レイン」（８９年）などのハリウッド映画でも活躍し、「鉄道員」（９９年）でモントリオール世界映画祭主演男優賞を受賞。中国の新聞が「近代中国に影響を与えた外国人５０人」の１人に選ぶなど、名実ともに日本を代表する映画スターとなった。

　「大学卒業後、生きるために出会った職業でしたが、俳優養成所では『他の人の邪魔になるから見学していてください』と言われる落ちこぼれでした」と振り返った健さん。

　「それでも『辛抱ばい』という母からの言葉を胸に、国内外の多くの監督から刺激を受け、それぞれの役の人物の生きざまを通して社会を知り世界を見ました。映画は国境を越え言葉を越えて、“生きる悲しみ”を希望や勇気に変えることができる力を秘めていることを知りました」と、映画の魅力にのめり込んでいった。

　今年８２歳になったが、昨年「あなたへ」に主演したように、映画への情熱はまだまだ盛ん。「今後も、この国に生まれて良かったと思える人物像を演じられるよう、人生を愛する心、感動する心を養い続けたいと思います」と、さらなる活躍を約束した。