中村米吉-中村隼人 対談(上)
大阪松竹座の「七月大歌舞伎」(~27日)に出演中のかわい過ぎると話題の若手女方・中村米吉(22)と歌舞伎界きってのイケメンと評判の中村隼人(21)が対談した。昼の部は「ぢいさんばあさん」で、夜の部は「絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)」でそれぞれ夫婦役を演じてる。
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-昼の部の「ぢいさんばあさん」は森鴎外原作の新歌舞伎。片岡仁左衛門演じる美濃部伊織と、中村時蔵演じる妻るんの甥夫婦の久弥ときくを演じている。
米吉「(片岡)孝太郎のお兄さんに教えていただきました。感性的なもので型はない。気持ちを大切にしています。本当によくできた話ですね」
隼人「僕は父(中村錦之助)に教わりました。24、5歳の役なので等身大。初々しくやればやるほど、老夫婦の悲しさが見える。舞台袖で見ていると、るんが伊織に子供を亡くしたことを詫びるくだりでは、客席と同じようにジーンときています」
-歌舞伎は伝統芸能。先輩方から教わることが多い。
米「先輩たちの技術を舞台の上で学べる事が本当に多いです」
隼「先輩たちの技術は本当にすごいです。毎日が学ぶことばかりです」
米「舞台は好きだけど、そう楽しんでばかりではいられないです。教わっても、それができないもどかしさがあるから。もちろん少しでも近づこうと、いつも努力はしています。でも教える側は何十年もの蓄積があり、それを一朝一夕でものにできることではないので」
隼「テレビで80歳過ぎた人が10代の役をやったらおかしいけれど、歌舞伎では当たり前に成立します。本当にその技はすごい。いまの自分たちにはない技です。だからとにかく若さと勢いで押していくしかないかなと」
米「もし僕たち演じる若夫婦がキラキラしていると言っていただけるなら、それはいまの自分たちにしかできない、世阿弥が(「風姿花伝」で)言うところの“時分の花”。これを“まことの花”にしていかないといけない」
-“中村隼人カレンダー”が随分話題を呼んだ。
隼「2年前から出してます。最初に(市川)猿之助さんが浅草の花形歌舞伎などで宣伝してくださいました」
米「カレンダーを見ると、月によって身体がしっかりして、顔つきが違ってきてるのがわかりますね」
隼「体重は高校卒業後3年で30キロ増えました。お腹がすいてなくても1日4、5食食べて、プロテインも飲んで。昔は頬もこけてげっそりしていて、歌舞伎の衣裳が嫌になるほど似合わなかった。いまはちょうどいい感じになったので、もう無理して食べることはしてません」
米「僕は彼が一番食べていたころを知ってます。夜中でもごはん食べてるんです」
隼「太れない悩みは大きいです。いまでも芝居によっては7、8キロすぐに痩せる。新陳代謝がいいみたい」
(後編は7月16日掲載)
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中村米吉(なかむら・よねきち) 1993年3月8日生まれ。中村歌六の長男。屋号は播磨屋。2000年7月歌舞伎座「宇和島騒動」の武右衛門倅武之助で五代目中村米吉を襲名し初舞台。たれ目がチャームポイントの新進気鋭の女方。坂東玉三郎に引き立てられ「日本振袖始」の稲田姫に起用された。
中村隼人(なかむら・はやと) 1993年11月30日生まれ。中村錦之助の長男。屋号は萬屋。2002年2月歌舞伎座「寺子屋」の松王丸一子小太郎で初代中村隼人を名のり初舞台。立役が主。大河ドラマ「龍馬伝」徳川家茂、「八重の桜」松平定敬で出演するなど、歌舞伎以外の活躍も多い