大村崑 オロナミンCのCM、当初は断った…そんなもん売れません

 俳優・大村崑は86歳の今も現役バリバリで活躍する。NHK大河ドラマ「西郷どん」では西郷吉之助(隆盛)の祖父・龍右衛門を演じ、存在感を放った。テレビ黎明(れいめい)期から「とんま天狗」(1959年)などの軽演劇で多大な人気を博し、オロナミンCのCMでは「元気はつらつ!」と笑顔を届けた。幾つになっても“崑ちゃん”と親しまれ、髪はふさふさ、肌もつやつやだ。何でそんなに元気なのか。崑ちゃんの“元気はつらつ”物語をお届けする。第1回はオロナミンCのCMを一度は断ったとう秘話を。

 -大村崑と言えばやはりオロナミンC。

 そもそもは「とんま天狗」というテレビのコメディー番組に出たことがきっかけなんです。大塚製薬の一社提供でした。「オロナイン軟膏」を文字って僕が「姓はオロナイン、名は軟膏」ってやってたんです。それなのに僕が出演していたオロナイン軟膏のCMを降ろされたんです。浪花千栄子さんに代わりました。断りもなかったから僕はふてくされてね。スポンサーってそんなものかと。

 -そんな経緯が。

 大塚さんは「怒らんといて。今すごいの作ってるから」となだめてくれて。それでオロナミンCを持ってきたんです。でもね、僕はもうキレてしまってるからくさすことしか言わへん。「いくらで売るんですか」「120円」「売れません。コーラでも60円。大阪人はしぶちん。夏の暑いときは半分を飲んであとは冷蔵庫にしまって夜にまた飲む。こんな小さかったら2回に分けられない。そやのに120円。だれが飲みますかいな。帰っておくんなはれ」ってお断りしたんです。

 -売れないと否定した。

 女房も聞いてました。その時は宣伝部長さんで、ほんなら次に専務か常務かが来ましたけど僕は「やらんと決めたらやりません」とお引き取り願いました。次に副社長が来てね。テーブルをたたいて「おまえは大塚なめとるんか」「なめてません」「『とんま天狗』を一社提供でどこの馬の骨かわからんやつを主演にしてやったのに、その恩を感じんとアタマから断るとはどういうことや。大塚は社運をかけてやってる。バチ当たるぞ」と。

 -大塚さんも必死。

 おれも火がついた。言い返したろうと思って息を吸い込んだら横に座って聞いていた家内が「やらせていただきます」と。後で知ったんやけど、部長、専務、副社長と代わるたびにCM契約金のケタが上がっていったんです。家内は貿易会社にいてたから書類を読むのがうまい。僕は書類を見ずにしゃべっていた。家内の言葉に僕は「なに言うてんねん。『元気はつらつ』って。おれは元気やないよ」と。若い頃に片肺をとったからね。でも家内は「よろしくお願いします」と。すぐに撮影が始まりました。

 -撮影は順調に。

 いやいや。一日にオロナミンCを50、60本飲むんです。どうなるかというとね。撮影が終わってホテルにもどってバスタブにつかったらぶおーんて腹が浮くねん。ガスで。こないにふくらんだ(おなかから10センチほど手を離して)。ベルトも何も入らん。

 -おなかはすぐ戻るのですか。

 いや、ガスはなかなか抜けない。せやから“へこきのコン”て言われました。「ごめん、今からオロナミンCを出すわ」っておならをするんです。僕の後ろにまわる役者は泣いてましたもん。

 ◆◆◆◆◆◆◆◆

 大村崑(おおむら・こん)(本名 岡村睦治) 喜劇俳優。1931(昭和6)年11月11日、神戸市生まれ。クラブのボーイから司会者、コメディアンに転身。50年代、テレビの黎明期に軽演劇「やりくりアパート」「番頭はんと丁稚どん」「とんま天狗」で全国的スターに。大塚製薬「オロナミンC」のCMで「うれしいとめがねが落ちるんですよ」のコピーがはやる。著書に「崑ちゃん ボクの昭和青春譜」(文藝春秋)など。2017年、旭日小綬章を受章。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

関西タレント最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(芸能)

    話題の写真ランキング

    デイリーおすすめアイテム

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス